現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HeRの微結晶を作製し、TR-SFXに最適な結晶を得ることに成功した。この結晶を用いて領域内の久保班と連携して分光解析を行い、HeRのフォトサイクルK→M→Oのうち、結晶中では1 msでM中間体まで進み、O中間体には達しないことを確認した。よって、TR-SFXの目標をM中間体にいたるまでの構造変化に設定した。SACLAを用いてTR-SFX実験を行い、光照射後から16 ns, 100 ns, 1 μs, 10 μs, 100 μs 1 ms, 2 msの7つのtime pointでデータを収集し2.0~2.2オングストローム分解能で構造を決定することに成功した。暗条件との差フーリエマップで、レチナールの異性化や蛋白質の構造変化が観察された。他のロドプシンとは異なり、TM1が構造変化することが明らかになった。 さらに、領域内の片山班と連携して酵素型ロドプシンRh-PDEの結晶構造を解析し論文として報告した。Rh-PDEは、膜貫通領域のC末端にリンカー部位でつながれた酵素ドメインがあり、光依存的な酵素として機能する。我々はRh-PDEの膜貫通領域の構造を決定し、Rh-PDEは8本の膜貫通ヘリックスからなることを構造的に明らかにし、1本多いヘリックスの果たす役割を解明した。さらに、膜貫通領域からリンカー部位を伸ばした構造を決定し、MDシュミレーション、高速AFMのデータを駆使して全長モデルを構築した。 また、久保班の研究協力者の神取教授と共同して、内向きプロトンポンプであるSzRの構造を決定し論文として報告した。SzRは構造的にはHeRよりもBRに近いことを明らかにした。一方、SzRの細胞内側の膜貫通ヘリックスが全体的に短く、特に6番目がヘリックス2週分短かった。こうした特徴によって、SzRはプロトンを細胞内に効率的に放出しやすいこと明らかにした。
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