研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、COVID-19の原因となるSARS-CoV-2ウイルスのエンドヌクレアーゼNsp15を阻害する化合物の探索をおこなった。Nsp15は機能状態で6量体を形成するが、単量体に結合・安定化し、6量体化を阻害する化合物によってNsp15の機能を阻害し、感染能を低下させることを目指したものである。PaCS-MD/MSM法を用いて単量体の自由エネルギー地形を調べ、単量体が最も取りやすい立体構造を明らかにし、これをターゲットとしてバーチャルスクリーニングを行い、有力な化合物を選び出し、dPaCS-MD/MSMによって化合物の標準結合自由エネルギーを評価した結果、非常に強い結合能をもつ化合物を発見することができた。この研究成果について原著論文にまとめ、Scientific Reports誌に掲載した(Inhibition of the hexamerization of SARS-CoV-2 endoribonuclease and modeling of RNA structures bound to the hexamer. DP Tran, Y Taira, T Ogawa, R Misu, Y Miyazawa, A Kitao, Scientific reports 12 (1), 1-15, (2022))。 また昨年度から引き続いて本領域の名古屋大学清中グループとの共同研究でGタンパク質共役受容体mGlu1とリガンドの相互作用解析を進めた。アミノ酸変異やリガンドのわずかな違いによって生じるmGlu1への効果の違いを評価するためにMD計算によって動的立体構造に生じる違いの評価を進めた。具体的にはFMPTとFPETという2つのリガンドのわずかな違いによってトグルスイッチと呼ばれる部位のダイナミクスに有意な違いが生み出されることを見出した。
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