研究領域 | 高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用 |
研究課題/領域番号 |
20H05444
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
島 扶美 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (60335445)
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研究期間 (年度) |
2020-10-30 – 2022-03-31
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キーワード | 分子動画 / シグナル伝達 / X線自由電子レーザー / 核磁気共鳴法 |
研究実績の概要 |
① NPEcagedGTP・Ras複合体微結晶に加え、光制御下でのcage離脱速度がより速いpHPcagedGTP を用いたSFXを実施しポケット開閉運動初期のデータ収集を行ために、pHPcagedGTPの合成経路の探索を外注(ナード社)において行った。 cagedATP合成に関する文献と同一、もしくは類似のルート、およびいくつかのルーとを探索したが合成の難易度が比較的高いことが明らかになった。中間体の合成方法は見出されたが、中間体からcagedGTPへの縮合反応が上手く進まない状況にある。現在、グアノシンならびにグアノシンモノリン酸をグアノシン側のパーツとしてして用いた新たな合成ルートを検討している。課題採択ならびに研究開始時期が2020年度下期だったこともあり、pHPcagedGTPの入手には至っていない。 ② NPEcaged-GTP型H-Rasの光照射HSQC_NMR測定とアミノ酸残基ごとのkinetics解析により、GTPの加水分解反応(GDP生成反応)において、2つのSwitch領域の構造変化に先駆けて、当該領域に隣接するα3ヘリックスとP-loopの構造変化が起こることが確認できた。また、GTPの加水分解過程においてRasはState 1構造を経由した後GDP型になることが明らかになった。 ③ GTP加水分解反応に際してState 2構造を経由するかどうかについては、構造変化の速度が溶液中と比較して緩やかになることが予想される、NPEcagedGTP型H-Ras微結晶を用いた光照射・固体31P_ NMR測定が必要と考えらえたため、当該測定を実施したこところ、cage離脱後State 1からState 2を経てGDP型への構造変化を示唆する実験データが得られた。 以上の研究成果を2020.12の第43回日本分子生物学会にて発表した(Saeki et al.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPEcagedGTP型Rasの光照射下でのSACLA/SPring-8ならびに溶液・固体NMR測定結果の詳細な解析を通じて、GTP加水分解に先駆け、State遷移が起こることが確認され、一定の成果が得られたと考えられる。固体NMRなど一部のデータについては現在解析中である。申請課題採択が年度下期ということもあり、pHPcagedGTPについては合成経路の探索のみに終わった。
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今後の研究の推進方策 |
GTP加水分解に係る遅いフェーズについては、固体NMRのデータを詳細に解析した上で、構造変化の捕捉に適したなタイムポイントを割り出しSS-ROXなどの測定手法を活用して分子動画を作成することが妥当と考えられた。pHPcagedGTPの合成を急ぎ、入手次第、pHPcagedGTPRasの微結晶ならびに溶液を用いた上記実験を進める。
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