研究領域 | 高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用 |
研究課題/領域番号 |
20H05454
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
櫻庭 俊 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主任研究員 (90647380)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 分子動力学法 / 質量テンソル分子動力学法 / 主成分分析 / 構造サンプリング |
研究実績の概要 |
生体分子の分子動力学シミュレーションは生体分子を解析する手段として幅広く利用されるようになったが、現実的な計算機システムのサイズにより実現可能なシミュレーション長はミリ秒単位以下にとどまっており、タンパク質の機能にかかわる構造変化をシミュレーションからサンプリングすることはまだ困難である。本研究課題では、これまでのサンプリングと異なる新たな基軸に基づくサンプリング手法の開発を目指して研究を行った。タンパク質の構造を効率良くサンプリングする手法の開発を目指し、これまで計算コストの高さにより利用されてこなかった質量テンソル分子動力学法を改良することで改善を試みた。 質量テンソル分子動力学法に用いる質量行列を低ランク更新行列で近似することで、低コストな質量テンソル分子動力学法を開発した。本年度は手法を分子動力学法の代表的パッケージであるGROMACSに組み込んだソフトウェアを作成したが、検証の結果、長時間のシミュレーションを行った場合の数値的不安定性が明らかとなり、アルゴリズムの修正を行う必要が生じた。問題が分子回転の防止のために使っている手法にあることが明らかとなったため、回避のために複数の実装を作成し比較検討した結果、最終的にシニョリン(10残基)などの低サイズでの分子でシミュレーションを安定に長時間動作させることに成功した。さらに、予備検証により実際に手法が期待通りに動作し、タンパク質運動を第1主成分方向へ加速している結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
数値実験に用いる予定であった大型計算機システムの資源不足が発生し対処のために資源の調整が必要となった。また、計算の結果GROMACSの機能である重心・回転拘束が正しく働かない(そもそもの実装が正しくない)問題があることが明らかになり、これらの拘束をポテンシャルによるゆるい束縛に置き換える必要性が生じるなどの実用上の困難も発生した。これらの問題に対処する必要があり、全体的な遅延を引き起こした。
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今後の研究の推進方策 |
実装のチューニングとfast folderタンパク質での検証を行い、実際の分子運動の速度が加速されているかどうか、また計算のオーバーヘッドがこれらの加速に見合うか否かの判定と検証を進める。
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