発達初期の運動感覚経験に伴い自然発生する『脳-身体-環境の相互ダイナミクス』が認知/行動の発達に寄与するという概念が提唱されており,脳-身体-環境間を繋ぐ中間要素である『感覚入力』と『運動出力』が発達的行動変容の礎になる可能性が示唆されている.このような概念に注目されている一方で,脳-身体-環境間の相互ダイナミクスが急峻に変化する発達初期において,連続的に変化する感覚入力および運動出力をどのように利用し,その後の行動適応を可能としているかは具体的には検証されていない. 本研究では,筋骨格身体に生じる急峻な発達的変化のモデル化を目指すとともに,身体発育を伴った感覚-運動ダイナミクスを介して創発される発達的行動変容のメカニズムを追究するため,実乳児の運動データを基に運動感覚構造の抽出し,時空間的なモジュールを発見したとともに,早産児や低出生体重児などを想定した筋活動低下や過緊張,関節角度制限を想定した自発運動シミュレーションを行い,感覚-運動情報構造への影響を検証するとともに柔軟身体モデルの開発を進めた. 以上の開発及び実験を通して,発達初期の自発運動によってさまざまな感覚運動情報構造が生じること,それらが筋力や関節角度などのパラメータによって変容することを示し,今後の行動獲得モデルの追究に繋がる知見を得た.
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