研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05462
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経筋骨格モデル / 足部 / ニホンザル / シミュレーション / 二足歩行 |
研究実績の概要 |
本公募研究では、ヒトの進化過程における足部の身体変容に対して、新しい神経制御系を獲得する過程を、神経筋骨格モデルに基づく二足歩行シミュレーションによって解析し、足部構造の改変によって生じる二足歩行の超適応メカニズムを明らかにすることを目的としている。 現在までに、ニホンザルの二次元筋骨格モデルを構築し、脊髄リズム生成回路網をモデル化した神経数理モデルと統合することで、ニホンザルの二足歩行を計算機内で順動力学的にシミュレートすることが可能となった。具体的には、X線CT積層断層画像から取得した身体3次元形状データと実解剖データに基づいて、2次元9節10筋からなるニホンザルの筋骨格モデルを構築した。一方、歩行運動のような動物のリズム運動は、脊髄に存在するリズム生成神経回路網が発生する運動指令により基本的には生成されていると考えられている。このためこの神経回路を歩行の基本的リズムを作るリズム生成層と、そこから出力される位相信号に基づいて各筋への運動指令を作るパターン形成層の2層で表し、それぞれ位相振動子、2つのガウス関数でモデル化した。遺伝的アルゴリズムにより、神経系パラメータを、歩行距離および移動効率を評価関数として探索した。その結果、実歩行とほぼ一致した、ニホンザルの二足歩行運動を生成することが可能となった。二足歩行中の筋骨格系と環境との力学的相互作用を再現することにより、筋骨格構造の改変が、二足歩行の力学や移動効率にどう影響するかを予測することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ニホンザルの二次元神経筋骨格モデルを構築し、神経数理モデルと統合することで、二足歩行運動の順動力学的シミュレーションが可能となったから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、一通り構築したニホンザル二足歩行の順動力学シミュレーションを用いて、足部の身体変容に伴う二足歩行の変化をシミュレートし、そのときの運動と神経系の状態変化を比較する。具体的には、ヒトが進化の過程で獲得した足部の形態的特徴が、二足歩行中の身体と環境との力学的相互作用に大きな影響を与えていると考えられるため、ニホンザルの足部形態をヒトに類似させる方向に変化させたときに、ニホンザルの二足歩行運動がどのように変化するのかをシミュレーションにより推定する。そして、身体変容に対する歩行変化と神経系の再構成がどのように起こるのかを調べ、そこから、二足歩行の超適応現象のメカニズムを考察する。さらに得られた知見を、動物の姿勢制御や歩行に関与する下行路であり、特に姿勢や筋緊張レベルの調節に関与する網様体脊髄路と、外乱に対して姿勢の崩れを未然に防ぎ、体平衡を保つ前庭脊髄反射を担う前庭脊髄路のモデル化にフィードバックし、歩行生成を試みることで二足歩行の超適応現象の解明を目指す。
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