研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05470
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野村 泰伸 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50283734)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 間欠制御 / 脳波 / β波 / 立位姿勢 / θ波 |
研究実績の概要 |
ヒト立位姿勢は、ふくらはぎ抗重力筋の持続的活動と伸張反射に因る足関節の高剛性によって安定化されると考えられてきた。10年前、我々はこの定説と対立する間欠制御仮説を提案した。ここ数年、生体情報学分野の複数の研究者によって、新仮説モデルと静止立位姿勢動揺データをデータ同化する試みがなされ、定説よりも我々の新仮説モデルの方が、データ当てはめの精度が格段に高いことが示されつつある。そこで、本研究では、立位姿勢の運動学・動力学的計測に加え、姿勢の神経制御に関わる脳活動(脳波)を計測し、立位姿勢の間欠制御仮説の脳内メカニズムの解明を目指した。 1年目の令和2年度では、インパルス的床面移動外乱に対する立位姿勢応答とそれに伴う脳波・筋電図応答を計測し、1秒程度の長潜時で高β帯域リバウンドとθ帯域の脱同調がベースライン脳波と比較して統計的に優位な振幅で発生すること、および、これらの活動は姿勢の回復が完了する前に始まり、長時間(約3秒間)に渡って持続することを示した。さらに、間欠制御に基づく立位姿勢制御モデルに当該外乱を加えたコンピュータシミュレーションにおいて、立位姿勢応答に長潜時(1秒以上)で、かつ長時間(数秒間)に渡って発生する間欠制御のスイッチをオフにする現象とβリバウンドの出現の関係を検討し、これらの同期・脱同期活動が発生する時間帯が、姿勢の間欠的フィードバック制御器のスイッチがオフになる時間帯と一致することを示すた。以上の結果は、基本的には身体の受動的機械力学的特性を利用して姿勢の安定化を謀りつつも、必要に応じて適切なタイミングで能動的介入を行えるように、姿勢状態の能動的モニタリングしている脳内状態を反映していることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
若年健常者を研究対象とする研究は、順調に実施でき、その成果は国際論文誌に採録が決定した(印刷中)。一方で、主としてCOVID-19感染拡大の影響を受け、パーキンソン病患者を研究対象とする研究に遅れ、および、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて姿勢の外乱応答に伴う皮質脊髄興奮性を定量化に関する課題に多少の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病患者を研究対象とする研究に遅れ、および、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて、姿勢の外乱応答に伴う皮質脊髄興奮性を定量化に関する課題に関して、研究期間2年目では、COVID-19に対する十分な感染予防対策を実施しつつ、研究協力者の医師等と相談の上、パーキンソン病患者を対象とする実験、およびTMSを用いる実験を実施することで、遅れを取り戻す予定である。
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