公募研究
中枢神経系を構成する神経回路は、障害や損傷に対して大規模な再編成を示し、機能の代償や回復に重要な役割を果たすことが知られている。このようなネットワークの再編成は、失われた機能を代償し回復させるため、動物にとって極めて重要な超適応戦略となっている。この超適応戦略のメカニズムは、これまで、主に運動機能の回復をモデルに研究が進んできたが、学習や認知機能など高次脳機能障害に関しては、研究がまだ進んでいないのが現状である。本研究では、パーキンソン病モデルにおける学習障害回復の神経回路メカニズムを解明するために、回復過程における脳内動態変化を明らかにするために、中脳の腹側被蓋野から側坐核へ投射するドーパミン神経系に着目して、認知機能回復の機構解明に挑む。本年度は、機能回復に有益なリガンド依存性の促進性イオン透過型受容体を用いた新規の化学遺伝学技術を応用した末梢投与法の開発を進めた。脳血液関門の透過性を高めるためにメチルフェニル酢酸を用い、これを尾静脈に注入することにより、ショウジョウバエIR84a/IR8a複合体を発現する脳内ノルアドレナリンニューロンの活動亢進およびその分泌の増加することを明らかにした。また、腹側被蓋野(VTA)から側坐核(NAc)に投射するドーパミン系が関与するか否かを検証するために、この神経系の機能操作技術を開発した。ドーパミン細胞でCre組換え酵素を発現する遺伝子改変ラットのVTAにウイルスベクターを用いてIR84a/IR8a複合体を発現させ、フェニル酢酸の脳内投与によってNAcにおけるドーパミンの放出を増加させられることを確認した。また、抑制性の化学遺伝学受容体であるグルタミン酸―塩素チャネル遺伝子をウイルスベクターを用いてVTAに発現させることに成功した。これらの技術を応用することにより、VTA-NAc経路を選択的に化学遺伝学的に操作することが可能となった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Mol. Brain
巻: 14 ページ: 170
10.1186/213041-021-00879-3