研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05476
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00305525)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳内出血 / リハビリテーション / 赤核-小脳歯状核路 / ウイルス二重感染法 / 多点電極法 |
研究実績の概要 |
R2年度の目的は、1)リハビリテーションによる運動機能の回復に関係すると考えられる赤核(小細胞部)へ入出力経路の確認、2)小脳核(歯状核)およびプルキンエ細胞からの多点電極を用いた電気応答確認の可否、3)ウイルス二重感染法の小脳および赤核への適応の可否を含む最終目的に向けた実験系確立、とした。 赤核(小細胞部)への入出力経路の確認では、赤核小細胞部のみへのMini-Ruby注入および小脳歯状核へ順行性ビオチンデキストランアミン(BDA)注入の神経トレース実験を実施した。その結果、赤核の1箇所(A: -5.2, L: 1.6, V: 7.5mm)へのMini-ruby投与により、反対側歯状核に限局した陽性細胞の検出を確認、また順行性トレーサーBDAの歯状核への投与により対側赤核でBDA陽性線維を確認、さらに小脳歯状核へのMini-ruby投与によりプルキンエ細胞層に陽性細胞体を確認できた。 小脳歯状核およびプルキンエ細胞からの電気応答の確認では、脳出血後のリハビリテーションによる運動調節系での電気応答変化を計測するため、その前段階として正常ラットのプルキンエ細胞において多点電極法による電気応答の検出を目指し、その計測が可能となった。現在、小脳歯状核における電気応答変化の解析について進めている。 ウイルス二重感染法の実験系の確立では、小脳歯状核へアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-DJ-EF1-DIO-hM4D(Gi)-mCherry)を注入、赤核小細胞部へレトルウイルスベクター(FuGE-MCSV-Cre)を注入することに決定し、現在Creに応答してEGFPのみを発現するAAV-DJベクター(DREDDシステム無し)を用い、小脳歯状核へのウイルスベクターの注入量の最適化を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、二重ウイルスベクター感染法を用いた赤核-オリーブ核-小脳路-赤核の回帰経路における神経核間回路の選択的遮断法を用い、脳出血後のリハビリテーションによる運動機能の回復過程において、小脳が関与する調節機構の適応的変化を解析することである。 この最終目的に向け予備実験から実験を遂行しており、本年度の目的は、1)リハビリテーションによる運動機能の回復に関係すると考えられる赤核(小細胞部)へ入出力経路の確認、2)小脳核(歯状核)およびプルキンエ細胞からの多点電極を用いた電気応答確認の可否、3)ウイルス二重感染法の小脳および赤核への適応の可否を含む最終目的に向けた実験系確立、とした。これに対し概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度のトレーサーによる神経投射実験および電気生理学的な検討から、小脳歯状核から赤核への神経投射の神経選択遮断が、CIMT法による機能の獲得過程における小脳を介した調節機構のダイナミックな変化を解析するという本研究目的に、現状で最も適していることが明らかになった。 今後は、小脳歯状核へのウイルスベクター注入の最適化を行った後、ウイルスベクターを二重感染させた脳出血+リハビリテーション群のラットに対し、DREDDにより機能阻害されることを確認する。さらに、上肢機能(ペレットリーチ試験)を評価する予定である 1、脳出血による小脳歯状核における変化の解析を、c-fos免疫染色や多点電極法を用いた電気応答性の変化の視点から解析する。2、脳出血後のCIMT法による運動機能回復とc-fos免疫染色および小脳歯状核の電気応答性変化の解析。3、小脳歯状核-赤核路を神経遮断するため、アデノ随伴ウイルス AAV1-CaMKII-rtTAV16とレンチウイルスNeuRet-TRE-EGFP.eTeNTを二重感染させる。神経遮断時における上肢運動機能を評価するため、reaching test等を検討する。4、皮質-赤核路の神経遮断時における小脳歯状核の電気応答性の変化についても時間経過の観点から解析する。
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