研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05479
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 貴記 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40296695)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 主体感 / sense of agency / 神経疾患 / 精神疾患 / 認知リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究項目では、神経疾患・精神疾患において異常な状態にある心身機能を「回復」させるために、主体の意識・アウェアネスのレベルからトップダウンに神経系にはたらきかけ、神経系の再編成を駆動し、心身機能の超適応を促通する方法の確立を目指す。具体的方法として、「主体感:Sense of Agency(SoA)」の精度を向上させるための認知リハビリテーション方略を開発した。主体感という、人間が環境に適応して生きていくための基盤となる意識・アウェアネスの精度を向上させることにより、疾患・病態横断的に心身機能の「回復」がみられることが期待される。いわば、こころ(体験)から脳へと介入し、脳を変えようという試みである。ボトムアップな神経科学的アプローチと相補的に進めることで、超適応が、より高い水準で実現できるものと考えている。本年度の成果としては、我々が開発してきた『SoA Task (Keio method)』を用いた研究において、1)主体感の生成のための予測モデルの学習がベイズ更新で行われていることを示したこと、2)定型発達の正常小児における主体感が成人とは異なることについて示したこと、3)発達障害の一型であるDCD: developmental coordination disorderにおける主体感異常について示したこと、4)主体感の精度を向上させるための認知リハビリテーション方略として、汎用のためのアプリケーションを開発し、研究者のみならず一般にも提供可能としたことが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、健常者および神経疾患・精神疾患患者を対象にしているが、コロナ禍のため、対面での研究が制限され、進捗にやや遅れが生じた。しかしながら、この期間に、実験機器の準備は十分に整えており、倫理申請も承認されており、すぐに実験を開始できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、プロジェクトの基礎研究、準備段階としての成果ではあるものの、今後のプロジェクトのために重要な成果が得られた。本研究は、健常者および神経疾患・精神疾患患者を対象にしているが、コロナ禍のため、対面での研究が制限され、進捗にやや遅れが生じた。次年度は、感染制御を十分に行いながら、実際に神経疾患・精神疾患に対して、広く主体感の精度を向上させるための認知リハビリテーションを行い、各疾患において、主体感の精度がどのように変化していくかについて、学習という観点から検証を進めていきたい。 さらに、我々は、主体感の神経機構としてのニューラルネットワーク、すなわち“Agency Network”としては、島皮質、頭頂葉下部領域(縁上回および角回)、皮質正中内側部構造(後部帯状回および楔前部)が、さらに、皮質下領域では、尾状核頭の重要性を明らかにしてきた。主体感の精度向上に伴い、“Agency Network”の再編成がどのように生じるかについて、Resting state fMRIを用いたconnectivity解析により検証する。
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