研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05484
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤山 文乃 北海道大学, 医学研究院, 教授 (20244022)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドーパミン神経細胞 / 大脳基底核 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、加齢、および加齢によるドーパミンの緩徐な減少による大脳基底核の解剖学的および電気生理学的可塑性を解明することである.令和2年度の具体的成果を以下に3つ挙げ,それぞれ概要を説明する. A.若齢および老齢マウスの運動能力解析:運動機能を評価するためロータロッド試験を実施した (12週齢 雄 =5; 60-70週齢 雄 =4 , 雌 = 5。ロータロッド試験はマウス用ロータロッド装置 (MK-610A, Muromachi)により行い、条件設定は理研BRCのマウス表現型解析プロトコル (Rota-rod test v1) を参考にした。60週齢以上のマウスでは、12週齢のマウスに比べて走行時間が短い傾向が見られたが、この差異が体重増加に依存する可能性も否定できないため、今後同週齢で体重を変化させたマウスの比較を加えていく必要がある。 B-1. ドーパミン神経細胞のサブクラスと分布:ドーパミン神経細胞は生化学的・遺伝学的に複数のサブクラスに分類されるが、パーキンソン病あるいは加齢により変性するドーパミン神経細胞のサブクラスは同じものなのだろうか? パーキンソン病により優先的に変性脱落するサブクラスはcalbindin 陰性のドーパミン神経細胞であることがわかっているため、老齢マウスにおいてcalbindinとドーパミン合成過程の律速酵素であるチロシン水酸化酵素 (TH) の二重免疫染色を行った。 B-2. 線条体におけるドーパミン投射量:現在サイクリックボルタンメトリーを購入し、電気化学的にドーパミン量を測定する準備を進めている。しかしまずTHの免疫染色により、中脳黒質から線条体へのドーパミン投射量を観察した。calbindin免疫染色は、線状態のパッチ(ストリオソーム)・マトリックス構造を可視化するために行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、同志社大学から北海道大学への研究代表者および研究協力者の異動、COVID-19感染拡大帽子のための実験規制による実験動物の搬入制限などのため、研究環境を整え、得難い加齢動物の入手経路を作ることに多くの時間を費やした。しかしようやく研究環境が整いめ、老齢動物の入手に関しては、令和3年度東北大学加齢医学研究所共同利用・共同研究に申請しており、より安定して老齢動物を入手できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は(A) 神経軸索標識により、加齢により変化した神経投射を検出する (B) この神経投射が解剖学的にシナプスする相手のニューロンを、共焦点顕微鏡解析で明らかにする (C) 光学的に確認されたシナプス部位における受容体の変化を共焦点もしくは電子顕微鏡解析で確認する (D) 解剖学的に同定したシナプス結合を、スライス標本を用いたパッチクランプ細胞記録で電気生理学的に確認する。このように、本研究を通じて、シナプスからマクロレベルまで、加齢による神経路の変遷を詳細に解明する予定である。また、老齢動物の入手に関しては、令和3年度東北大学加齢医学研究所共同利用・共同研究に申請しており、より安定して老齢動物を入手できるよう努力していく。
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