現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳損傷後にダイナミックな脳神経系の可塑的変化が生じ、失われた脳機能が回復することがある。一方視床を中心とした体性感覚情報の中継領域に脳卒中が発症した後に不適切な可塑的な変化が生じる結果痛みが生じることもある。いわば脳損傷後に生じる“超適応変化”は良い側面と悪い側面を持っている。令和2年度の研究により脳卒中後に生じる脳活動及び神経構造の変化を同定し、以下の2報の国際ジャーナルへの論文公表を行った。これらはいずれも脳損傷後に生じる良い適応と悪い適応を理解するうえで重要な知見を提供する成果であり、リハビリテーション分野への応用が期待できる。 Nagasaka K, Nemoto K, Takashima I, Bando D, Matsuda K, Higo N, Structural plastic changes of cortical gray matter revealed by voxel-based morphometry and histological analyses in a monkey model of central post-stroke pain, Cerebral Cortex, in press Kato J, Y. Murata Y, Takashima I, Higo N, Time- and area-dependent macrophage/microglial responses after focal infarction of the macaque internal capsule. Neuroscience Research, in press
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研究代表者である肥後と研究分担者である村田が確立したマカクサルを用いた内包脳卒中モデル動物(Muata and Higo, PLOS, ONE 2016)を対象に、脳損傷後に生じる脳活動および解剖学的変化を明らかにする。例えば、視床脳卒中サルモデルを対象に行ったVBMと免疫組織化学染色を組み合わせた解析を内包脳卒中モデルマカクサルに対しても進める。加えて、回復過程で生じる投射レベルの変化を検証する。すなわち脳卒中に活動変化が認められた機能代償領域に、解剖学トレーサーであるBiotynilated Dextran Amine(BDA)を注入し、1ヶ月程度経過して終末に至った時にその分布を観察する。BDA陽性軸索の解析を、脳損傷を受けていない健常個体と内包梗塞個体の間で比較し、後者のみに存在する投射経路(=脳機能回復過程で新たに形成される経路)を同定する。とくに損傷と対側半球で機能代償が生じた個体に対して、同側手の運動出力を担う投射経路に注目して解析する。これらの研究を通じて、脳損傷後に生じるダイナミックな適応的、および不適応的可塑的変化を解明する。
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