研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05494
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
天貝 佑太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90773896)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 初期分泌経路 / 亜鉛 / タンパク質品質管理 / 亜鉛輸送体 |
研究実績の概要 |
ゴルジ体における遊離亜鉛濃度維持機構を解明するため、私たちが新規に開発した化学プローブによる亜鉛濃度定量システムを用いた。本化学プローブは亜鉛に対する解離定数がpHによって変動するため、測定したい区画のpHを測定する必要があった。そこで、pHに応答して励起スペクトルが変化する改編型GFPであるpHluorin2を用いて初期分泌経路内のpH測定を行なった。pHのキャリブレーションには、MBP-pHluorin2を大腸菌に発現させamyloseレジンに固相化したものを用いた。その結果、小胞体はpH 7.2、ゴルジ体は上流側から下流側にかけてpH 7.0、6.5、6.1と勾配がついていることが明らかとなった。 ゴルジ体に局在し、ゴルジ体内腔へ亜鉛を輸送する複数の亜鉛輸送体をsiRNAによってそれぞれ発現抑制すると、各亜鉛輸送体によって亜鉛濃度が低下する区画が異なる。この違いが生じる機構を解明するために、超解像顕微鏡を用いた亜鉛輸送体の詳細な局在観察を行ったところ、ZnT7はゴルジ体の最上流領域に局在しているのに対し、ZnT6は中間ゴルジ体領域に局在していることが明らかとなった。この局在の違いが、ゴルジ体における亜鉛濃度維持機構の違いであると考えられた。 また、亜鉛によって活性化する分泌型亜鉛酵素が初期分泌経路中の輸送に従って亜鉛を獲得し、活性化する様子を観察するために、ビオチンの添加によって小胞体からの出芽を誘導できるRUSHシステムを用いた実験系構築を始め、いくつかのタンパク質で小胞体から同調した分泌の誘導に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
亜鉛酵素活性化を見る実験系構築では、当初作製したプラスミドでは、ビオチン非存在下における亜鉛酵素の小胞体への蓄積が効率よく見られず、実際の実験まで進むことができなかったため、やや遅れていると評価した。現在では、発現コンストラクトの改善を行い、亜鉛酵素を小胞体に留めておき、ビオチンの添加による輸送を見ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
分泌経路内腔への亜鉛イオン流入経路を詳細に解明するため、様々な阻害剤処理やsiRNAによる遺伝子発現抑制を行った際の分泌経路内亜鉛濃度変化を測定する。亜鉛酵素活性化を見る実験系を完成させ、亜鉛酵素が分泌経路内のどの部分で亜鉛を獲得し、活性化するか解明する。これらの実験系と知見を組み合わせることで、分泌経路への亜鉛流入と亜鉛酵素活性化の機構を解明する。
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