公募研究
血液脳関門における亜鉛トランスポーターとして、従来同定されていたZNT1に加えて、SLC39A1 (ZIP1)、SLC39A6 (ZIP6)、SLC39A10 (ZIP10)、SLC39A14 (ZIP14)が高発現することをタンパク質レベルで明らかにした。さらに、Protein RER1は、重金属トランスポーターとして推定されている分子であるが、血液脳関門においてこの高発現が示された。血液脳関門では、銅の透過機構は全く不明である。このProtein RER1は、機能未知のタンパク質であるが、今後、銅輸送への関与を検証していくことは重要な課題である。再構築戦略によってヒトの生体内の金属輸送機構を解明できるか否かを示すため、血液脳関門のFe輸送をモデルとして、タンパク質存在量(mole)と単分子輸送活性(/mole)の統合によって、マウスの血液脳関門におけるFe輸送担体の輸送活性を再構築し、実測値と比較した。単分子あたりの輸送活性は、血液脳関門モデル細胞を用いて計測した。In vivo血液脳関門におけるタンパク質発現量を統合することによって血液脳関門のFe透過速度について再構築した結果は、マウスにおける透過速度の実測値とほぼ一致することが示され、in vivoの金属輸送速度を再構築できることが証明された。以上のように、我々は、金属の生体内動態に関わる輸送分子機構を独自のプロテオミクス手法によって探索・解明し、解明が困難なヒト生体内における輸送分子機構(血液と脳の間の透過など)をin vitroから定量的に解明するという新たな戦略を確立した。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、生体内における金属輸送担体タンパク質の存在量を解明することを目的としていたが、予定前倒しで、in vivoの金属輸送担体の輸送機能を再構築する系を確立できたため。
独自の定量プロテオミクス手法を用いて、未開拓の金属輸送分子機構を探索し、病態変動を解明することによって、疾患やその治療において生命金属研究が欠かせないことを示す。
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