公募研究
1)オキサリプラチンによる白金神経毒性と感覚障害との関連の解析:マウスにオキサリプラチンを反復投与したところ、冷過敏応答や機械過敏応答が初期から見られたが、6-8週後にかけて、熱痛覚障害と触覚障害(adhesion removalテスト)が発生した。また、2-4週後から、末梢血流の低下が認められ、後肢冷却後の血流低下からの回復についても遅延が認められた。白金毒性による末梢血流障害が末梢神経障害の進展に寄与していると考えており、その初期症状として血管応答異常が関与すると推察される。2)白金神経毒性におけるミトコンドリア特異的DNAトポイソメラーゼ1(Top1mt)の関与:野生型およびTop1mt欠損マウスにオキサリプラチンを反復投与したところ、いずれも冷過敏応答や機械過敏応答が生じ両群間に差はなかったが、投与8週後に見られる熱痛覚障害は、Top1mt欠損マウスの方が強く現れる傾向が見られた。坐骨神経の軸索障害については両群間に差はなかったが、DRG神経のミトコンドリア障害(ミトコンドリアの膨潤化や空胞化)は、Top1mt欠損マウスの方が多い傾向が見られた。これらの結果から、Top1mtは白金によるミトコンドリア障害の発生により末梢神経障害の症状の一部に寄与すると考えられた。3)シスプラチンによる味覚障害の行動・病理解析(研究協力者 宗との連携研究):味覚障害における神経障害の関与を明らかにするため、シスプラチンによる味覚障害モデルラットを作製し、舌神経における神経変性の有無を検討した。シスプラチンをラットに5-8週間反復投与し、味覚感受性をlickingテストにより評価した結果、lick ratioは有意に低下した。また、投与8週後の舌神経において、変形した軸索の数が有意に増加し、シスプラチンにより味覚障害を呈したラットの舌神経では軸索障害が生じていることが示された。
3: やや遅れている
白金系抗がん薬投与との白金毒性による行動解析については概ね順調に進んでいるが、コロナ禍のため、他機関との連携を取ることが難しく、計画していた末梢神経内の白金蓄積や神経内金属の測定を実施することが出来なかった。
コロナ禍で他機関との連携を取ることが難しく、末梢神経内の白金蓄積や神経内金属の測定を実施することができない状況が続いている。今後は、当該研究機関内で実施できる行動解析や組織学的解析に注力する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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