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2020 年度 実績報告書

生体必須金属セレンの動態の鍵を握るセレノプロテインP、そのブラックボックスを開く

公募研究

研究領域「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究
研究課題/領域番号 20H05516
研究機関京都府立大学

研究代表者

田中 俊一  京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70591387)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードセレン / セレノプロテインP / 人工結合タンパク質 / X線結晶構造解析 / セレノシステイン
研究実績の概要

本研究課題の趣旨は、セレノプロテインP(SelP)のタンパク質レベルでの研究を推進し、SelPによるセレンの運搬や供給、疾病発症のしくみの理解に繋げることにある。本年度の研究では、(1)SelPのリコンビナントタンパク質の調製と物理化学的特性解析、(2)SelPの結晶構造解析ならびに構造-機能マッピング解析に向けた人工結合分子の創出を行った。
(1)について、SelPの全長(Full)、N末端領域(Ndom)、N末端領域+His-rich(Ndom-HIS)、His-rich+C末端領域(HIS-Cdom)、C末端領域(Cdom)の5種類のコンストラクトについて、NusAタグとの融合によって可溶性タンパク質を取得することに成功した。精製方法も確立し、サイズ排除クロマトグラフィーによって単分散な単量体タンパク質を安定的に調製できるようになった。SelPによるセレンの運搬・供給メカニズムの知見を深めることを目的に、得られた精製タンパク質を用いて物理化学的特性解析を行った。Ndom-HISとCdomを対象に、円二色性スペクトル測定によって二次構造解析を行うとともに、熱やプロテアーゼに対する安定性解析を実施した。これらの結果を基に、SelPが細胞内に取り込まれた後、効率的なセレンの供給をどのように実現しているのか、その分子メカニズムについての新たな洞察を得た。
(2)について、SelPの結晶構造解析のための結晶化シャペロンとして、また、構造-機能マッピング解析のためのプローブとして、人工結合分子の創出を試みた。フィブロネクチンIII型ドメインを鋳型とする変異体ライブラリーから、ファージディスプレイによるバイオパニングなどによる選別を経て、いくつかの結合分子が創出できている。具体的には、Ndom-HISに対しては13種類、Cdomに対しては5種類の配列の異なる結合分子が得られている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)SelPのリコンビナントタンパク質の調製と物理化学的特性解析、(2)SelPの結晶構造解析ならびに構造-機能マッピング解析に向けた人工結合分子の創出、それぞれにおいて進展が見られており、おおむね順調に進展していると判断した。
(1)について、これまで困難とされてきたヒトSelPのリコンビナント発現に成功し、高純度精製タンパク質も安定的に取得できるようになった。さらに、精製タンパク質を用いた物理化学的解析ができるようになったことで、今回、SelPによるセレンの運搬・供給における分子メカニズムについての新たな洞察を得るに至っている。
(2)代表者の持つ人工結合分子を創出するための技術基盤を活用することで、SelPの各ドメインに対して特異的に結合する分子を複数種類取得することに成功した。既に結晶化シャペロンとしての利用では成果が得られており、Ndom-HISと人工結合分子との複合体について、いくつかの結晶化溶液条件において良質な結晶を取得するに至っている。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策
(1)SelPの結晶構造解析
Ndom-HISと人工結合分子との複合体については、既に良質な結晶が取得できており、今後、Cdomについても同様に人工結合分子との複合体状態での結晶化を目指す。これらの結晶を用いてX線結晶構造解析を実施し、SelPによるセレンの運搬・供給の分子メカニズムについて、その構造基盤を明らかにする。
(2)SelPの構造-機能マッピング解析
SelPは配列相同性の高いホモログが無いため、結晶構造解析だけではセレンの運搬や供給、疾病発症に関わる機能的部位の推察は難しい。そのため、人工結合分子をプローブとして、in vivoでの構造-機能マッピング解析を行う。本年度得られた人工結合分子をモデルマウスの血中に注射する等で、セレンの運搬や供給、またSelPとの関与が報告されているインシュリン抵抗性への影響を解析することをしている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Revisiting the Rate-Limiting Step of the ANS?Protein Binding at the Protein Surface and Inside the Hydrophobic Cavity2021

    • 著者名/発表者名
      Ota Chikashi、Tanaka Shun-ichi、Takano Kazufumi
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 26 ページ: 420~420

    • DOI

      10.3390/molecules26020420

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Insertion loop‐mediated folding propagation governs efficient maturation of hyperthermophilic Tk‐subtilisin at high temperatures2020

    • 著者名/発表者名
      Uehara Ryo、Dan Nanako、Amesaka Hiroshi、Yoshizawa Takuya、Koga Yuichi、Kanaya Shigenori、Takano Kazufumi、Matsumura Hiroyoshi、Tanaka Shun‐ichi
    • 雑誌名

      FEBS Letters

      巻: 595 ページ: 452~461

    • DOI

      10.1002/1873-3468.14028

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spectroscopic Evidence of the Salt-Induced Conformational Change around the Localized Electric Charges on the Protein Surface of Fibronectin Type III2020

    • 著者名/発表者名
      Ota Chikashi、Fukuda Yui、Tanaka Shun-ichi、Takano Kazufumi
    • 雑誌名

      Langmuir

      巻: 36 ページ: 14243~14254

    • DOI

      10.1021/acs.langmuir.0c02367

    • 査読あり
  • [学会発表] 生体必須金属セレン動態の鍵を握るセレノプロテイン P,その分子構造・機能解析に向けた取り組み2020

    • 著者名/発表者名
      田中俊一、雨坂心人、高野和文
    • 学会等名
      生命金属に関する合同年会 Consortium of Metal Biosciences 2020
  • [学会発表] 抗体工学の可能性を拡げる新たなアプローチ‐シグナル配列のキメラ化によるファージディスプレイ効率の向上‐2020

    • 著者名/発表者名
      雨坂心人、高野和文、田中俊一
    • 学会等名
      第10回4大学連携研究フォーラム

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公開日: 2021-12-27  

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