本研究課題の趣旨は、セレノプロテインP(SelP)のタンパク質レベルでの研究を推進し、SelPによるセレンの運搬や供給、疾病発症のしくみの理解に繋げることにある。本年度は、SelPの構造機能解析として、(1)リコンビナントSelPの物性解析と結晶構造解析、(2)Sec導入型recSelPの調製と諸特性解析、(3)MonobodyによるSelPの細胞内取り込み阻害能解析、を進めた。 (1)について、大腸菌発現によるリコンビナントSelP(recSelP)の調製に成功し、分光学的・生化学的解析から、recSelPは天然型のSelPと同等の構造を有していることが示唆された。続いてrecSelPの結晶化に取り組み、recSelPの特異的に結合する人工結合タンパク質monobodyとの複合体で良質な結晶を得ることができた。SPring-8 BL41XUにおいて2.4Å分解能でのX線回折データの取得にも成功し、現在、構造解析を進めている。 (2)について、非天然型アミノ酸をタンパク質の目的部位に導入することができる大腸菌発現系を用いて、Sec導入型リコンビナントSelPの調製を試みた。高純度の精製タンパク質サンプルの調製に成功し、立命館大 三原先生にDAN法による解析を行っていただいたところ、8割以上の高率でSecが導入されていることが確認できた。現在、当該タンパク質を用いて還元活性測定を進めている。 (3)について、SelPの酵素触媒機能における重要部位や、細胞内取り込みにおける重要部位を探索する目的で、SelPのN末端領域とC末端領域のそれぞれに結合するmonobodyを取得した。N末端領域に対しては5種類、C末端領域に対しては1種類得られている。現在、東北大 斎藤先生にご協力をいただき、これらのmonobodyを用いて、酵素触媒機能や細胞内取り込みに対する影響を解析している。
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