研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05520
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
梅村 知也 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10312901)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタロミクス / 一細胞分析 / ICP-MS / 微量金属元素 |
研究実績の概要 |
本年度は、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を基盤とする単一細胞元素分析システムの構築に向けて、区画整理されたプレート上に細胞を一つずつトラップしてリンス(洗浄)も可能とするデバイスの開発を中心として研究に取り組んだ。 1) 1細胞トラッピングマルチウェルプレートの開発. シリコン基板上に細胞サイズのウェルを多数設け、その区画整理されたウェル群に細胞を1つずつ捕捉するマルチウェルプレートの試作と改良を行った。シリコン基板上に設けるウェルのサイズは、細胞が1つだけ入れるサイズであることは言うまでもないが、ウェル内を細胞が適度に転がれて、かつ、送液によっても抜け落ちない程度を想定して設計した。まだ予備実験の段階ではあるが、ウェルの直径は細胞サイズに対して1.4倍程度、深さを0.7倍程度に設定すると、1つずつ細胞をウェルにトラップでき、洗浄等の操作も行えることを確認した。また、上記のシリコンウェハを鋳型として、レジンキャスト法によりスライドガラス上に樹脂製のマルチウェルプレートを作製することにも成功した。 2) 細胞導入支援デバイス(アプリケーター)の開発. マルチウェルプレート上部に細胞懸濁液やリンス液を誘導するアプリケーターを構築してスループットの向上を図った。試行錯誤の結果、マルチウェルプレートの上部に、流路を刻んだシリコーンラバー製のスペーサーシートを置き、アクリル板で蓋をして固定したシンプルなツールが有効であることが分かった。このアクリル板には溶液注入・排出用の穴(注入口)が設けてあり、ここからマイクロシリンジポンプを介して、細胞懸濁液やリンス液をプレート表面に通液する仕組みとなっている。この細胞導入支援デバイスの設置により、数分程度で誰にでも確実かつ簡便に80%以上のウェルに細胞を導入することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のマルチウェルプレートの開発に加えて、ICP-MSとのインターフェース部(レーザーアブレーション部)も市販装置に頼るだけでなく、1細胞分析に特化した装置の開発を始めている。現在、上記のマルチウェルプレートを収容する樹脂製チャンバーの試作とICP-MSへと導く配管系の構築、また、ガルバノスキャナーを備えた青色レーザー (450 nm、 1.6 W)とPC制御で照射位置の調整が可能なXYステージ、照射位置を観察するためのデジタルカメラを組み合わせて試作機の1号機が完成したところである。また、それらを制御するアプリケーションソフトウェアの開発も並行して行っており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞トラッピング方式のハンドリングデバイスの開発はここまで順調に進んでおり、引き続き開発と改良を図っていく。一方、さらに超高速での1細胞元素分析を実現するためには、細胞をトラップせずに流れの中でハンドリング・サンプリングしてアルゴンプラズマに送達する技術開発が不可欠である。そこで、フローサイトメーター的な1細胞元素分析を実現するためのマイクロ流体デバイスの開発に着手する。
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