研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05521
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
石原 慶一 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80340446)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ダウン症候群 / 銅 / モデルマウス / 責任遺伝子 / 生体必須微量元素 |
研究実績の概要 |
我々は、ダウン症モデルマウス脳での銅蓄積を見出しており、これがダウン症の病態において重要な役割を演じている可能性を示唆する結果を得ている。そこで本研究では、銅蓄積の責任遺伝子の同定、およびその分子メカニズムと意義解明を目指している。 2020年度は、複数の既存のダウン症モデルマウスを用いたダウン症モデルマウス脳での銅蓄積の責任遺伝子の遺伝子座の絞り込みを行うことで、責任遺伝子を30遺伝子にまで絞り込むことができた。さらに、その責任遺伝子の絞り込みを行うための新規の染色体改変マウスの作製を行い、意図した遺伝子コピー数であることをCGHアレイにより確認できた。 また、脳での蓄積銅を低銅含有食の投与によって改善させることに成功し、海馬での網羅的な遺伝子発現変動を解析し、銅蓄積によって変動する遺伝子群の分類が完了した。また、患者血清での銅濃度を測定することで、患者の銅代謝異常について検証するが、その予備実験としてDSモデルマウスでの血清銅の変動を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銅蓄積遺伝子の遺伝子座の絞り込みに成功し、さらなる絞り込みや同定に必要な新規遺伝子改変マウスの作製も完了した。また、DSモデルマウス海馬において見られた遺伝子発現変動遺伝子群の約半数が、銅の蓄積を改善したDSモデルマウスで改善したことを捉えることに成功した。また、トランスレーショナル・リサーチ実施のための基礎データの収集が完了し、倫理承認を得たことからスムーズに臨床研究が行える準備が完了した。これらの状況から、研究がおおむね順調に進呈んしていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ダウン症モデルマウスの脳での銅蓄積遺伝子の同定まで行い、責任遺伝子のみを2コピーとしたマウスについて網羅的な行動試験を施行し、銅蓄積の病態生理学的な意義を明らかにする。また、網羅的な遺伝子発現変動を解析し、その分子メカニズムの理解を目指す。さらに、トランスレーショナルリサーチを実施し、ヒトでの銅代謝異常の可能性についても迫る。ただ、今後のCOVID-19感染拡大状況の悪化による臨床検体の収集への影響を懸念している。
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