研究領域 | 情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理 |
研究課題/領域番号 |
20H05534
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
龝枝 佑紀 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (20770514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Wntシグナル / ゼブラフィッシュ / イメージング / 胚発生 |
研究実績の概要 |
動物の胚発生・組織再生はシグナル伝達によって制御され、高い再現性で実行される。そのためには、シグナル情報は様々なノイズが存在しても正確に伝わる仕組み(頑強性)を有する。しかし、実際の発生・再生過程の組織におけるシグナル伝達の頑強性の実体は理解が進んでいない。我々は、ゼブラフィッシュ胚におけるWntシグナルによる前後パターン形成をモデルとして、in vivoにおけるシグナル伝達の頑強性の実体解明を進め、開発したin vivoシグナル定量系と摂動誘導系を用いて、発生組織におけるシグナル伝達の頑強性の定量的理解を目指し、”in vivoシグナル伝達の頑強性の設計原理”を解明し、「生命の情報物理学という生物学と物理学の間の新たな学際領域の開拓」を目指す。そのために、以下の計画によって研究を遂行した。 計画(1) シグナル勾配の軽微なノイズに対する修復機構の解明:Wntシグナル異常を持つ細胞を導入してシグナル勾配にノイズを引き起こし、シグナル異常細胞及び隣接細胞群におけるWntシグナル活性の動態やこれら細胞群の移動・形態変化等をリアルタイム解析し、細胞死以外にも細胞移動や細胞周期停止による修復プロセスを示唆する結果を得た。 計画(2) シグナル勾配のノイズ修復方法を決定するノイズ強度の閾値の定量解析:「異常細胞と隣接細胞のWntシグナル活性差」と「異常細胞の細胞死」の関連を定量解析する。これにより、細胞死を介した修復と介さない修復のどちらを選択するかの閾値となるノイズ強度を解明する。これらの解析に必要な各種レポーター(Wntシグナル、細胞死)のトランスジェニック系統の作製を行った。 計画(3) ノイズ修復方法を決定するノイズ強度と細胞間相互作用の関係の定量解析:細胞間張力などの物理学的性質を定量する。これらの物理学的性質を定量するための各種センサーの確認等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュを用いたライブイメージング解析からシグナルノイズの新たな修復プロセスを示唆する結果を得た。また、さらなる今後の解析を進めるのに必要なトランスジェニック(Tg)系統の作製が進み樹立できつつある。これらの計画予定通りの進捗によりおおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、予定の以下の研究計画に即して進めていく。 計画(1) シグナル勾配の軽微なノイズに対する修復機構の解明:ゼブラフィッシュ初期胚にWntシグナル異常を持つ細胞を導入してシグナル勾配にノイズを引き起こし、シグナル異常細胞及び隣接細胞群におけるWntシグナル活性の動態やこれら細胞群の移動・形態変化等をリアルタイム解析し、ノイズ修復の全プロセスを把握する。さらに分子機構の詳細を解明する。 計画(2) シグナル勾配のノイズ修復方法を決定するノイズ強度の閾値の定量解析:細胞死を介した修復と介さない修復のどちらを選択するかの閾値となるシグナル活性のノイズ強度を解明する。 計画(3) ノイズ修復方法を決定するノイズ強度と細胞間相互作用の関係の定量解析:細胞間張力などの物理学的性質を定量する。こうして、ノイズ強度差とノイズ修復方法決定の細胞間相互作用プロセスを物理学的に扱える定量的なデータを取得する。 上記の未了の課題を継続しつつ、下記の研究を行う。 計画(4)シグナル勾配ノイズ修復方法決定の理論的解析:上記のデータや得られたデータを基にして、「Wntシグナル勾配に生じるノイズの強度から勾配修復プロセスの数理モデル」を構築を試みる。そして"in vivoにおけるシグナル伝達情報の頑強性の設計原理”に迫る。
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