植物の環境認識と自律分散型統制の基盤として機能している概日時計を研究対象とし、従来法に比べ「データ密度10 倍かつ5 倍速」を誇る非常に高効率な独自の「位相応答曲線(PRC)の高速同定技術」を強力な研究ツールとした細胞集団のパターン形成についての理論研究を行った。本研究では、精細に計測された概日リズムの時空間パターンから、成長点の追加発生に伴う位相特異点群の自発生成と内部ノイズの定量化を行い、「細胞間情報伝達の指向性を定式化」することを目指した。 2021年度は、1)多種類のPRCの計測(後半)を行った。前年度に確立した手法を用いて、様々な因子(計12種)に対する個体ならびに各部位(計4種)のPRCを求めた。 さらに2)成長点における概日リズムの位相リセット現象へのPRCの導入を行った。成長点では強烈な概日リズムの位相リセットが発生しており、恒常条件(DD条件ならびにLL条件)においてストライプ状の位相波が発生する。さらに、根における成長点は主根の先端だけでなく、側根として追加形成されるため、長期間に渡る時空間ダイナミクスには強い内部ノイズが発生する。この内部ノイズの特性を解明することは、植物の高度な環境応答と器官発生の連動ダイナミクスを解明する手がかりとなる。そこで、成長点に生じる概日時計の位相リセット現象の数理モデルに、PRCを導入した改良型の数理モデルを構築した。【方法】開発した数理モデルを基に、特に「概日リズムの位相リセット」と「細胞周期」の関係について分子レベルのメカニズムを捉えつつ、ダイナミクスの機構を結合振幅方程式へと簡略化して数理モデル化した。
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