研究実績の概要 |
ターンテイキング(Turn-Taking)は、人間同士のインタラクティブな対話において文化・言語に依らず普遍的に見られる話者の交代現象である(Levinson et.al., PNAS, 2017)。対話に関する研究は、古くから会話分析の研究としてトランスクライブされたテキストをターゲットとした研究が行われてきた(Sacks et.al., 1974)。しかし、近年、発話間の「間(Gap)」や「オーバーラップ(Within-overlap, Between-overlap)」といった客観的に定量化可能な時間的側面についても着目されつつある。 本研究課題では、日本語環境下で養育されている3歳児と、日本語・韓国語のバイリンガル成人とのインタラクションを対象とた、縦断的研究をおこなった。実験では、成人がA(日本語15分)-B(韓国語15分)-A(日本語15分)の順で子どもと自由に遊んでいる場面をICレコーダとビデオカメラで記録し、A(子どもにとって母語での対話)とB(子どもにとって非母語での対話)におけるGAPにどのような違いが見られるかを中心に分析した。 縦断的な実験の結果、ネイティブ話者間(成人)の対話と同様に、非母語での対話においても、ターンテイキングの時間的側面に変化が見られ、平均200msのGapが成立していることが、分かった。このことは、対話における聞き手(子ども)が、話し手の発話終了時期を精度良く予測し、かつ、自己ターンの発話開始時期や内容について適切に計画していることを示唆する。予測と計画の精度には、発話者の意図や意味内容、文法といった言語的側面だけでなく、発話における抑揚やアクセントといった非言語的な側面も深く関わっており、引き続き、第二言語習得との関連性について研究する必要がある。
|