研究領域 | 人間機械共生社会を目指した対話知能システム学 |
研究課題/領域番号 |
20H05572
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
片上 大輔 東京工芸大学, 工学部, 教授 (90345372)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポライトネス理論 / 対話システム / BTSJ自然言語コーパス / 言語的配慮 / 比較文化調査 |
研究実績の概要 |
本研究では,ポライトネス理論に基づく親和性の高い対話システムの開発を目的としており,2年間の研究期間内に,(1)ポライトネス理論の知見に基づく配慮を行う対話行動決定モデルの構築を行う,(2) 自然会話コーパスに基づき対話相手の属性に応じた言語的配慮を行う対話システムの構築と配慮効果の実証実験を行う,(3) 人工物と人の親和性に関する比較文化調査を行うことを目標としている.
本研究の成果として,会話エージェントが言語的配慮(ポライトネス)を自律的に制御する手法を提案した.提案手法を実現するためのアプローチとして,社会言語学におけるポライトネス理論に基づき,性別・年齢などのユーザの属性情報や,会話場面でのフォーマル度などを利用し,ユーザとの社会的関係を考慮したポライトネス制御をエージェントが行うことで,円滑なコミュニケーションを実現することが可能となった.また,人間関係における心理的距離/社会的地位の差/会話場面の3つの要因に基づいて,どのようにポライトネスが制御されるかを検証した実験結果が得られた.これらの結果について,人工知能学会全国大会国際セッションにて発表を行い,選抜論文として選抜され,Springerにポストプロシーディングスとして掲載された.
言語的配慮の効果について,日本,アメリカの2か国において,459人の大規模な調査を行い,その結果について,HAIシンポジウムにおいて発表を行った.実験の結果から,アメリカ人参加者は擬人化エージェント全体に対する否定的態度や不安な印象が日本人参加者より強い傾向にあったが,その一方で擬人化エージェントと疑似的な対話を行なうシチュエーションにおいてアメリカ人参加者に対する受容性を日本人参加者よりも高めることが可能であることが示唆された.シンポジウムにおいてImpressive Short-paper Awardを受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年1月までに、対話システムの言語的配慮のモデル化、コーパスデータからの機械学習モデルの検討、異文化比較調査実験準備を行い、2021年3月までに、異文化比較調査実験を行う予定であったが,新型コロナウイルス感染拡大のため,緊急事態宣言が発令され,研究協力者とのやりとりや実験準備・実験等が困難となった.そのため補助事業の繰越制度を利用し,遅れた分の実験等に関しては,感染状況が落ち着いてから実施できるように準備を行った.異文化比較調査実験においては,まず準備が可能だった,日本とアメリカにおける2か国にて実験を行い,その成果の発表まで行うことができた.
その後,2カ国の調査結果をふまえて,問題点の改善と整合性を得るための実験計画の再度見直しを行い,日本,アメリカ,中国,フランス,オーストラリアに加えて,イギリスも追加し,大規模な実験計画を作成した.現在これら,6カ国において,調査実験を行い,データを収集した.
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今後の研究の推進方策 |
異文化比較調査実験においては,日本,アメリカの他に,予定していた,中国,フランス,オーストラリアに加えて,イギリスも追加し,調査実験を行った.業者に委託して,アンケートの翻訳を行い,さらにグローバルなクラウドソーシングの会社であるSURVEY MONKEYにて,条件を統一した大規模な調査実験を行いデータを取得した.今後これらのデータをもとに詳細の分析を行う予定である.
また,対話システムの開発に関して,会話の場面や相手の文末表現によって対話システムの文末表現を変更することによる人間らしい対話システムを開発し,新学術領域の他の班に協力してもらい,アンドロイドに実装を行い,アンドロイドと人間間の対話による実証実験を行うこととする.
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