研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
20H05578
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Mortierella属菌 / 内生細菌 / 共生 |
研究実績の概要 |
本研究に供試した内生細菌BRE除去株を含む18菌株をトマトに接種した結果、13菌株が対照区と比較してトマトの地上部乾燥重量を増加させた。Mortierella humilis S2のBRE除去株を接種したトマトでは葉の褐変および根部の褐変、生育不良が認められたように、地上部乾燥重量を増加させた13菌株のうち5菌株では葉の褐変や根の生育不良などの病徴を生じた。病徴を生じた5菌株にはBRE保有株1菌株、BRE非保有株2菌株およびBRE除去株2菌株が含まれていたが、トマトを健全に生育させた8菌株のうち6菌株にはBREが存在していた。このことから、BREはトマトの生育促進に関わることが示唆された。 これまでに培養に成功しているMortierella属菌の内生細菌BREはM. cysteinexigens B1-EBTおよびMycoavidus sp. B2-EBの2菌株のみである。今回初めてMortierella humilis S2のBREの培養に成功した。得られた細菌株をMycoavidus sp. S2-EBとした。このMycoavidus sp. S2-EBは2,575,677 bpのchromosomeおよび99,085 bpのプラスミドを保持していることが明らかとなった。Mortierella属菌のBREでプラスミドを保持する菌株は今回が初めての報告である。Mycoavidus sp. S2-EBはM. cysteinexigens B1-EBTと同様にシステイン生合成経路が欠落していた。そこで、Mycoavidus sp. S2-EBのMortierella属菌への再導入を試みた。16S rRNA遺伝子をターゲットとしたPCRおよびLIVE/DEAD染色を用いた蛍光顕微鏡観察により細菌の有無を確認したが、再導入されたことの確証には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回初めてMortierella humilis S2の内生細菌BREの培養に成功した。得られた細菌株をMycoavidus sp. S2-EBとした。このMycoavidus sp. S2-EBが2,575,677 bpのchromosomeおよび99,085 bpのプラスミドを保持していることを明らかした。Mortierella属菌のBREでプラスミドを保持する菌株は今回が初めての報告である。
|
今後の研究の推進方策 |
Mortierella属菌、そのBREおよび植物の3者間の相互作用を解明するため、BRE保有株およびBRE除去株をトマトに接種して比較した。これには、BREの培養が必要であり、今年度はBREの培養に成功することが出来た。そこで、M. verticillata YTM181BF1+Mycoavidus sp. S2-EBを供試して、対峙培養によるMortierella属菌のBREの再導入法を検討した。その結果、元来M. verticillata YTM181に内生するBREはGroup Cに属しているが、対峙培養後に検出されたのは、再導入法に用いたGroup Aに属するBREであった。この結果は、BREのMortierella属菌への再導入に成功した可能性を示すものであり、今後、この現状を確認することを予定している。
|