植物と共生する微生物は宿主の生育に重要であるにも関わらず、株レベルでの共生微生物種、遺伝子の種類、どの微生物がどの遺伝子を持つのか、またそれらの遺伝子が染色体上もしくはプラスミド上にあるのかなど、分子基盤の多くは未解明である。本研究では、ロングリードメタゲノムを行い、植物共生微生物叢の全体像を明らかにすることを目的とした。これまでに、植物体からの微生物の分離・長鎖DNAの抽出などの実験学的手法、ロングリードのアセンブリや遺伝子同定などのバイオインフォマティクス手法を確立した。アセンブリの結果、得られた16S rRNA遺伝子の約3分の2が既知の種とは異なる新規の配列であった。また、1Mbp以上の大きな染色体レベルでのコンティグを多数得た。これらは、16S rRNAおよびANIによる系統分類を行い、単離の難しい分類群を含む様々な染色体・メガプラスミド配列を得た。また、環状化したコンティグも多数得られており、それらは新規の染色体・プラスミド・ファージなどの配列であった。また、新規の染色体の中には難培養性細菌の完全長の配列が含まれていた。その他にも環状化はしているが染色体・プラスミド・ファージ特有の遺伝子が見当たらないため、生物学的に同定ができないものも含まれており、未知の配列を続々と明らかにしている。その他にも、宿主との共生や微生物間での相互作用に関わる遺伝子を新規の微生物種で明らかにするなど、植物共生微生物叢の全体像を明らかにするための様々な情報を得ることに成功した。
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