研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
20H05596
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
菅野 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10462847)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微生物 / 植物 / 内生菌 / RNA / メタトランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
本研究では、微生物群が植物との共生時に発現する機能情報を包括的に理解するための基盤技術の確立を目指し、植物試料由来の環境RNAから微生物mRNAを濃縮して取得する新規手法を開発する。これを圃場での解析に適用し、従来法と比較した共生微生物群の機能情報の取得効率に違いが見られるかを検証する。まず初年度は、筑波大学一般圃場のコムギ個体や野生イネ科植物のナギナタガヤ個体を用いて、以下のRNA調製の要素技術の開発と植物部位に応じた技術の最適化に取り組んだ。 1.密度勾配遠心による微生物細胞の濃縮法:複数の密度勾配遠心分離媒体を供試し、最適な分離媒体・濃度等を決定した。 2.高効率なトータルRNAの抽出法:植物からのRNA抽出に最適なホモジナイズ法や抽出キットを選別した。 3.ハイブリダイゼーションによる解析対象外のRNAの選択的除去法:植物のrRNAやmRNA、原核微生物のrRNA等の解析対象外のRNAを広範に除去する目的で複数配列のRNAプローブの組合せをカスタマイズして、ハイブリダイゼーション除去工程後の収率を確認した。 開発した細胞濃縮法が微生物群集構造に与える影響を処理前後の試料中の細菌16S rRNA遺伝子のアンプリコン解析により検証した結果、群集組成や多様性に著しく大きな影響はないことが確認された。さらに、植物試料からの微生物mRNAの収量を評価することで開発手法の適用可能性を検証し、次年度の野外試験圃場のコムギの解析に必要となる植物重量を試算した。筑波大学の畑作施肥量試験圃場からの植物試料の採取や、RNAシーケンスリードをマッピングする際のメタゲノム情報の取得、さらにデータ解析に関しては、領域内で連携を図り協議を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規手法の開発に、イネやミヤコグサへの単離菌株の接種によるモデル植物共生生態系を用いることを当初計画していたが、領域内の計画班との早期連携により、次年度を見越して圃場のコムギ試料を用いて手法開発と技術改良に取り組むことができている。
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今後の研究の推進方策 |
野外試験圃場に生育するコムギの共生生態系を対象に、本研究の開発手法を適用することで、植物との生物間相互作用に関わる微生物遺伝子の発現情報の取得を計画する。具体的には、領域が共有する筑波大学の畑作施肥量試験圃場にて栽培される無窒素区と施肥区のコムギ出穂期の地上部と根を各々採取して、RNA調製とシーケンス解析を行う。新規RNA調製手法の適用の有無により微生物メタトランスクリプトームデータの取得効率に違いが見られるかを検証する。さらに、圃場の試験区間の植物生産性の違いを共生微生物群の機能発現情報の観点から考察する。圃場からの植物採取や、RNAシーケンスをマッピングする際のメタゲノム情報の取得や、データ解析に関して、それぞれ領域内で連携を図る予定である。
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