情報爆発の背景には、記号化された言語的情報に偏ったコミュニケーション支援技術の拡大がある。この問題を克服するためには、言語的情報と同時に、情報を統合するためのコンテクスト情報の共有促進が不可欠である。そしてコンテクストを生む「間」が人々の間で共有される必要がある。そこで本研究では、人間の対話コミュニケーションを対象として「間」の共有機構をモデル化し、それに基づいて共創的な情報統合を支援できるヒューマンロボットインタラクション(HRI)の構築をめざした。 具体的には、情報統合の対話、特に、対話を介する合意形成プロセスに注目し、言語に関わるセマンティクスと「間」に関わるダイナミクスの時間発展の同時計測を行い、インターパーソナルな「間」の共有過程と情報の統合過程の関係について解析しモデル化すること、それをHRIの対話に実装し「間」の共有を介して情報統合を支援できる共創的なHRIシステム技術を確立することをめざした。 平成21年度は2年計画の初年度であることを考慮して、合意形成の対話コミュニケーションにおける言語に関わるセマンティクスと「間」に関わるダイナミクスの時間発展の同時計測を行った。前者の言語的情報は会話分析を用いて意味の生成のプロセスとして評価し、後者は会話の発話長や交替潜時(ポーズ長)、さらに身振りの相関解析によって発話と身振りのタイミング制御のダイナミクスとしてモデル化した。さらに、その情報統合支援への有効性をヒューマンロボットインタラクションにおいて評価したところ、高齢者の対話の支援に顕著な有効性が確認された。
|