本研究の目的は政策関心空間と呼ぶ変化の早い世論の計測手法の確立と、その活用による政治的な意思決定、特に選挙における有権者の意思決定を支援する優れたシステムの構築である。本年度は衆議院議員の任期満了が予定されているため、衆議院選挙が実施されることが確実であったため、その選挙に於ける各種の社会実験を実施した。内容としては、shuugi.inとして実施している予測市場実験の世論計測手法の有効性を確認すること、またマニフェストの全文検索システムを提供することによる世論計測技術の確立、および新しい投票行動支援支援システムの設計、実施である。その中で、本研究で取り組んできている政策文書の自動分類技術分類といった、世論計測に用いられる要素技術を活用している。 本年度の成果としては下記の点を上げることができる。まず一点目に予測市場実験shuugi.inでの極めて精度の高い予測の実現である。新たな与党となった民主党の獲得議席をほとんど誤差なく308議席と予測した上に、一般的な見方とは異なり福田政権下での選挙であってもおそらく自民党は下野していた可能性が高いことを示した。その際に、エージェントの導入やかんたん売買システムなどのインターフェース向上により一般的に困難とされるダブルオークション方式による市場の運営に改善をもたらしたことは突起すべきである。また、二点目としてマニフェスト検索システム実験による世論計測の可能性、およびベクトル空間モデルに依存しない新しい投票支援システムの実用性を示した。
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