本研究の目的は政策関心空間と呼ぶ変化の早い世論の計測手法の確立と、その活用による政治的な意思決定、特に選挙における有権者の意思決定を支援する優れたシステムの構築である。本年度は参議院議員選挙がが予定されているため、その選挙に於ける各種の社会実験を実施した。内容としては、shuugi.inとして実施している予測市場実験の世論計測手法の有効性を確認すること、またマニフェストの全文検索システムを提供することによる世論計測技術の確立、および新しい投票行動支援システムの設計、実施である。その中で、本研究で取り組んできている政策文書の自動分類技術分類といった、世論計測に用いられる要素技術を活用している。本年度の成果としては下記のとおりである。参議院選挙に見られた民主党の惨敗という結果は最終的に予測できなかった。しかし、政権交代後の民主党に対する期待の高まりと失望を計量的に評価できたことについては成果である。マニフェストの検索実験には、Twitterによるアクセスインターフェースを実装するなど、より親和性の高いアプローチを採用したが、これらの結果アクセスが増加し、選挙における争点として年金、医療などへの関心が高いことを計量することができた。また、争点投票支援システムによって、争点の理解度による投票行動の影響を分析することができた。分かりにくい争点が存在する場合には、概ね政党に対する心理的な影響(いわゆる感情温度)によって態度を決定するという傾向である。そのことは、今後の政策主体の政治の実現に向けて大きな障害となりうることが考えられるため、今後の課題であると言える。
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