研究概要 |
本年度は,提案している要求駆動型負荷分散方式「Tascell」の(1) 性能向上の研究,(2) T2Kオープンスーパーコンピュータでの評価,(3) アプリケーション,(4) 広域分散環境への対応,および(5) Tascellコンパイラその開発基盤についての研究を行った.具体的には,(1) 遅延への対応と過剰分割への対応を検討した.タスクのプリフェッチについては不規則な場合には困難であり,有効な方式の一つとして,タスクを事前に複製しておき一部を重複実行する方式を考案している.遅延隠蔽を用いる方式については多めに分割する必要はあり,今後研究を進めていく.また過剰分割については,有効な方式として時間ベースの分割制限を考案している.(2) ノードあたり16コアのSMPクラスタにおいて最大128並列での性能評価を行い,優れたスケーラビリティを得られることを確認した.(3) 並列化が困難とされている,グラフからspanning treeを構築するアルゴリズムにTascellを適用し,ノード内並列で妥当なスケーラビリティを得ることに成功した.(4) 複数の中継サーバを拠点ごとに起動しそれらを接続することで,InTriggerのような広域分散環境において複数の拠点を連携させた並列計算を行えるようにし,予備評価を行った.今後も,性能改善等のために改良を進めていく.(5) Tascell言語からC言語への変換器の開発基盤である「SC言語処理系」を改良し,複数の変換フェーズの実装を独立したモジュールとして扱うことを容易にした.
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