本年度は、前年度までに開発した簡略化した基本的なテキストマイニング手法の枠組みを、実際の市場参加者への調査や研究協力者との協力により、実際に市場分析に応用するために必要な手法の拡張および精緻化を行った。前年度に開発した長期市場動向分析のためのテキストマイニング手法を、実データによる運用テストで評価する手法を開発した。2008年1月から2009年5月の1年5カ月間をテスト期間として、回帰式を更新しながら国債市場で運用テストを行った。その結果、年率平均に換算して、4.9%~88.05%の高いリターン成績を示すことが確認できた。国債市場のテキストマイニングでは市場変動に大きな変化がある時に正答率が高く、それが高いリターンにつながった。前述のテキストマイニング手法を、英語の経済テキストを対象とした分析に使用できるように手法の拡張を行った。日本銀行の金融経済月報の英語版を用いて有効性の評価を行った結果、1.13%~25.43%の年率の平均リターンを示すことができた。前述のテキストマイニング手法を拡張し、よりフォーマットが統一されていない新聞記事データを、市場分析に用いる手法を開発した。また、月次の国債市場から、より一般的な日次の株式市場に対象を拡張した。2008年1月1日~1月31日を外挿予測した結果、方向性(上下)の正答率は平均53.7%であった。日次の株式市場分析では、一般に運用には52%が合格ラインと言われているので、それよりは高かった。
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