亜熱帯モード水の上端付近のクロロフィル・酸素極大が、強い鉛直拡散に伴う栄養塩の鉛直輸送により維持されていることを検証するため、東北大学と海洋研究開発機構が共同で北太平洋亜熱帯域に展開してきたクロロフィルセンサー・酸素センサー付プロファイリングフロートのデータを解析し、亜熱帯モード水・季節密度躍層系の水温・塩分・密度・クロロフィル・酸素の季節内スケールから季節スケールまでの時間発展を記述した。各深度における溶存酸素濃度の時間発展の比較を行った結果、有光層の下部(深度約50~100m)から亜熱帯モード水の上端部(深度約100~150m)へ酸素が輸送されていることがわかった。この輸送が鉛直拡散によるものとすると、鉛直拡散係数は2.5×10^<-4>m^2s^<-1>と見積もられた。これは亜熱帯モード水の渦位収支に基づく先行研究から指摘された比較的大きな鉛直拡散の存在を支持する結果といえる。さらに、この鉛直拡散係数を船舶観測で得られた硝酸塩濃度の鉛直プロファイルに適用することで、硝酸塩の鉛直輸送は1.2mmolN m^<-2> d^<-1>と見積もられた。 このデータ解析と並行して、海洋研究開発機構の学術研究船「淡青丸」の航海(6月)で、夏季の亜熱帯モード水・季節密度躍層系における物理構造と栄養塩・炭酸系パラメータ、乱流場の観測を行った。この観測により得られた亜熱帯モード水の上端付近の密度プロファイルと鉛直拡散係数の関係は測点ごとに大きく異なっており、強い鉛直拡散過程の非定常性が示唆された。 また、この「淡青丸」による観測結果にあわせて設定した数値モデルを用いて、亜熱帯モード水が内部波の伝播に与える効果に関する定量的な考察を行った。
|