当初目的は「(1)北太平洋域を対象に、衛星観測によって大気中の黄砂量の空間分布を推定する手法を確立し、成果をA01班の「物質輸送モデル」に提供して「黄砂降下(deposition)量の推定」に資する」「(2)SeaWiFSおよびMODISデータを解析し、衛星観測に見られる黄砂量の年々変動を明らかにする」ことであったが、申請時に比べ物質輸送モデルの研究が進み、黄砂降下量が一定精度で推定できるようになったこと、また衛星データが蓄積され、「年々変動の解析」がやりやすくなったことを勘案し、研究の重心を「黄砂量推定手法の高度化」から「衛星データによる年々変動の観測」に移すこととした。また、「年々変動」については、対象を黄砂に限らないこととした。以下に今年度の成果を記す。 (1)衛星観測による北太平洋域黄砂分布データセットの作成 SeaWiFS GACデータ約5万シーンを収集して1998~2008の間の経験的黄砂指数の月間平均分布データセット作成に着手し、ほぼその処理を終えた。ここで経験的黄砂指数とは、SeaWiFSの近紫外~青域の2波長の観測に基づくもので、研究代表者が以前提唱していたものである。 (2)日本近海における小粒径エアロゾル増加傾向の解析 SeaWiFSデータ解析に加え、MODISデータを用いて、1998~2008の期間の日本近海におけるエアロゾルの光学的厚さおよびオングストローム指数の月間平均値分布データを作成し、時系列解析を行った。 その結果、MODISでもオングストローム指数の増加傾向(サブミクロン粒子の相対的な増加傾向)は統計的に有意であった。また、冬季に限るが日本海南部におけるエアロゾル光学的厚さに占めるサブミクロン粒子の割合の増加傾向は、長田らによる「立山におけるサブミクロン粒子の体積濃度の増加傾向」と良く一致した。
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