研究概要 |
せん断流下での孤立した赤血球、脂質ベシクルの運動モードを研究した。脂質ベシクルの運動を表すのに、ベシクルの形状と流れの方向に対する傾斜角の2変数の微分方程式からなる理論モデルをこれまでに構築した。本研究では、それを赤血球に拡張し、膜の回転をあらわす位相角を加えた3変数のモデルを構築した。赤血球膜にはずれ弾性があるため、膜の回転速度は位相角に依存する。このモデルを用いて、定常せん断硫下では、これまで知られている、tank-treading, tumbling,中間の間欠的な運動、の3つだけでなく、tank-treadingとtumblingが同期して起こる運動があることを明らかにした。位相角と傾斜角の運動間の相互作用によって、周期が整数比の状態への引き込みが起こる。 周期的にせん断強度を変動させた場合、赤血球、脂質ベシクルともに、多様な運動が起こることを示した。低周波の振動流では、定常流で得られるダイナミクス(Tank-treading, Tumbling, swinging,中間的な運動)を周期的に繰り返す。周波数が高くなるにつれ、ベシクルの運動の位相がせん断流に比べて遅れていく。追随できなくなる高周波数では複数のリミットサイクル運動が共存する。また、剛体では発展方程式の時間対称性から一周忌の後、同じ状態に戻ってくるが、熱揺らぎを加えると特定の傾斜角の振動運動を誘発することに明らかとした。
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