不規則にこみいった系において、各要素がお互いの運動の邪魔をしあうことで生じる協同的停止状態への転移を総称してジャミング転移とよぶ。その現象に対する理解を深めるとともに、それに関連させた形で非平衡基礎論を発展させ、両者を融合していくことを目指して、以下の3点の成果を得た。 第一に、不規則だがゼロエントロピー密度の最密充填状態に関わる熱力学的相が存在することを理論的に示せる2次元格子粒子模型を提案した。この相での動力学振る舞いはジャミング転移と密接に関わると期待される。 第2に、ジャミング転移点近くで重要な役割を果たすと考えられている「まれに生じるゆらぎ」を特徴づける大偏差関数について、簡単な場合について、それを操作的に決める新しい変分原理を提案した。 第3に、ジャミング転移と非平衡基礎論の接点に位置するタイプの現象として、コロイド分散系の溶媒にずりをかけた場合を調べ、平衡条件下で生じる「対称性を破る1次転移」が僅かな非平衡ずりの影響で「臨界現象を伴う転移」に変わる可能性があることを見出した。 これらは全て論文として出版された。ジャミング転移研究と非平衡基礎論が融合されたとは言い難いが、その目標に向けて異なる方向から着実に成果を残すことができた。
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