研究概要 |
本研究では,流動・電場などの外場の印加や温度・圧力などの環境変数の変化に伴うブロック共重合体の構造-構造転移(Order-Order Transition, OOT)を、最先端の顕微鏡技術である透過型電子線トモグラフィー法(Transmission Electron Microtomography, TEMT)により3次元的な実像として捕らえ、その3次元構造とOOTのダイナミクスを明らかにする。 ブロック共重合体のOOTには様々なパターンがある。申請者らは、これまでHPL構造からGyroid構造へのOOT(以後、HPL→Gyroid転移と表記)について検討を行ってきた。この研究では、OOTの中途過程で2つの構造が共存する状態を固化し、これらが接している接合面の3次元観察を行った。その結果、このOOTがエピタキシャル的に起こっていること、両構造の相(ミクロドメイン)の連結様式に高度な規則性があること、など一連の重要な知見を得ることに成功した。中でも注目に値するのは、転移領域において、ミクロドメインの組み替えがまさに起こりつつある部分(成長端)と思われる3次元構造を発見したことである。本研究では、これらの知見をベースとして、OOT前の初期構造を単結晶に近づけることで、この成長端を再現性よくクリアな形で出現させ、この部分を詳細に観察・解析することでOOTの本質とも言える構造転移機構(ダイナミクス)を明らかにする。 本年度はPoly(styrene-block-isoprene)(SI)ブロック共重合体試料を用い、HPL⇒Gyroid転移、Gyroid⇒Cylinder転移の両OOTの検討のために、結晶性の高い(単一粒界からなる)初期構造の作製に注力し、これに成功した。また、SIブロック共重合体試料を用い、温度変化を逆転させOOTの可逆性に関する検討を行い、最適な実験条件を見つけた。
|