本年度に行なった研究と得られた結果は下記の通りである。 1) 変調光照射で誘発した相分離とモルフォロジー形成動力学:重合反応に伴う弾性ひずみを緩和させるため、連続光照射の代わりに一定の周波数で光照射し、重合・架橋を引き起こして、相分離を誘起した。結果として、ON/OFF照射において、照射(ON)時間を一定にしながら、OFFの時間長くすると、同一の架橋密度に対しては混合系のモルフォロジーが乱れ、相平衡へ早く達したことが観測された。 2) 架橋反応に伴う弾性ひずみの効果:一定の間隔でOFFの時間を導入し、架橋によって系内に形成されたひずみを緩和させ、ポリマーブレンドのモルフォロジーの規則性を制御することができた。さらに、同じ架橋密度に対して、この変調照射法で相分離を誘発すると、OFFの時間が短ければ、短いほど力学のtanδの温度分散が狭くなることがわかった。 3) Mach-Zehnder干渉計による反応誘起ひずみの計測:バルク状の高分子において、高分子鎖セグメントの局所運動が不均一なため、自由体積分布が形成される。架橋反応を施すと運動性が低下し、この不均一性が益々増加する。結果として、試料内に局所的にひずみが発生し、実験温度と試料のガラス転移温度との差により、様々な緩和挙動が観測された。架橋の最中、試料の収縮が見られたが、光の照射を停止した時点で試料のガラス化温度(Tg)がまだ実験温度より低い場合、収縮の回復が見られた。また、試料のTgが実験温度を超えると試料がガラス領域に突入し、物理的疲労の挙動が観測された。今後、この反応誘起ひずみのモルフォロジーに及ぼす効果について実験を行う予定である。
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