本研究では、光反応を用い、高分子を含むモノマー第二のモノマーの重合反応を起こすことにより、混合系を不安定化させ、高分子・高分子の相分離を誘発した。高分子系の挙動はその粘弾性で特徴づけられる。反応によって形成されるモルフォロジーが混合系内に形成されつつ高分子とそのネットワークの緩和過程に影響されるため、当研究室で開発した「コンピュータ支援光照射(CAI)法」で相分離を誘起し、モルフォロジーに及ぼす高分子ネットワークの緩和を時空間的に制御した。得られた主な結果は以下の通りである。 1)モルフォロジーの秩序に及ぼす断続の光照射の効果: 光架橋性ポリスチレンのメチルメタクリレートモノマー溶液を365nmの紫外光を連続的に照射すると相分離が誘発され、球状ドメインが生成され、ある程度相分離が進むとこれらの球状ドメインが六方充填構造(Hexagonal相)に変わることがわかった。ここで、光強度や照射時間を変えずに、照射の最中に一定の停止時間を導入すると、Hexagonal 相が乱れ、長い停止時間を導入すると、その乱れが増加し、最後に構造が完全にランダムになった。これらの結果は、反応相分離系は典型的な競合系の一つであることが明らかであり、また光照射の断続的に中止させると、この競合過程も断続的に中止するため、構造の乱れが発生することが結論できた。 2)モルフォロジーの秩序性に及ぼす空間変調光の照射の効果: 空間変調光で相分離を引き起こすために、CAI法でストライプ状の光ON-OFFパターンを作製して、顕微鏡上で試料に照射し、モルフォロジーの時間変化をin situ観測した。結果として、モルフォロジーはストライプの間隔に強く依存することがわかった。光を照射すると、光の弱い領域に連続相ができ、また光の強い領域ではサラミ構造が得られた。さらに、光の空間周期を狭めると、ある限界を超えたらサラミ構造が出現しなくなり、また光強度の弱い領域にはドロップレットを含めた連続相が得られたことがわかった。サラミが出現するためには、相分離する空間がサラミの平均直径の2倍が必要であることがわかった。
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