研究概要 |
昨年度1-butyl-3-methylimidazolium chloride (BmimCl)と、水(H_2O)、エタノール(EtOH)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などとの混合系の粘度と密度を広い組成範囲で25℃において測定した。粘度はすべての系において対数スケールでほぼ直線的に減少すること、BmimClの部分モル体積はそのモル比が0.1以下で、水との混合系ではほぼ一定、その他の液体との混合系では減少し続けること、さらに誘電緩和測定から、モル比0.1以下ではBmimClに水が比例的に配位するが、他の有機溶媒ではそうならないことを明らかにしてきた。本年度はモル比0.2以下の範囲で各種溶媒中のBmimClの比粘度をより詳細に測定し解析した。その結果、水以外の溶媒中ではモル比の増加とともに、低分子系で粘度の増加が最も大きいといわれていたLiCl水溶液と同等な増加を示すことが明らかになった。水中での粘度の増加はさらに大きく、モル比0.2では他の系の5倍程度にまで増加し、その濃度依存性は高分子希薄溶液の挙動に類似しており、ひも状の構造が存在すると考えるのが最も合理的であることが明らかになった。BmimClを溶媒として、水溶性高分子の標準試料であるプルラン溶液の粘度式の作成,および希薄溶液の動的粘弾性測定を行なった。粘度式の指数からbmimClは水より良溶媒であること,動的粘弾性の結果はRouseモデルに補正項を加えて現せることが判ってきた。セルロース溶液でも定性的に似た結果が得られており,bmimCl中で分子分散していると考えられるが、今のところデータの精度に少し問題がある2)。長い主鎖と短い鎖が結合した形態である絹フィブロインの場合,動的粘弾性挙動は上記2種類の高分子の場合とは異なり、樹状高分子の理論式で一応記述できることを見出した。
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