生きた細胞や生体組織内部では、主として細胞骨格とモーターたんぱく質の働きにより生成された非平衡力により、様々な小器官や構成物質が互いに力学的な相互作用を及ぼしあっている。このような強い非平衡環境下におかれた生体物質(ソフトマター)は、周囲の媒質や自分自身の非平衡度に依存してその性質を大きく変化させる。本研究ではその詳細なメカニズムを解明するために、試料の非平衡度や力学的性質を制御しかつ計測できる新しい非平衡力学物性計測システムを開発している。 例えば定常的なずり場の印加に伴う非平衡状態では、ずり場方向とずり場に垂直な方向(試料の深さ方向)のコロイド粒子運動間の詳細釣り合いを破れるために、時間反転対称性を破る特異な確立流束の回転が生じる。従ってずり場により駆動される試料の非平衡を検出するためには、試料の深さ方向のコロイド粒子の運動をも同時に観察する必要がある。4分割フォトダイオードを利用した粒子位置計測では、コロイド粒子の深さ方向の運動に対する感度が著しく低い。そこで、本研究では1)コロイド粒子像や2)レーザー光の干渉パターンを解析することにより、深さ方向を含むコロイド粒子の3次元運動を解析している。
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