研究概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)のような長い棒状コロイド粒子は,ユニークな構造や力学的電気的特徴のため,ナノセンサーやディスプレイなど様々な応用分野の新しい材料として注目されている。この材料設計において重要なことは,長い棒状コロイド粒子を並べることである。その方法の一つとして低分子液晶がつくる配向場を利用することが考えられているが,このような液晶分子と棒状分子の混合系の物性はまだあまり明らかにされていない。本研究は,平衡・非平衡の統計力学的理論と計算機シミュレーションを用いて,長い棒状高分子と低分子液晶の混合系でおこる,相構造や相分離,電場や磁場などの外場による配向秩序と相秩序の制御と,そのダイナミクスを明らかにすることを目的とする。ここでの棒状高分子は,CNTやタバコモザイクウイルスやPBLGなどの棒状高分子液晶を念頭に置いている。 本年度は,液晶分子と棒状コロイド粒子の混合系の自由エネルギーを構築し,濃度や温度に依存する相図の計算を行った。特に,棒状分子と液晶分子が平行に配向する場合と,垂直に配向する場合についてどのような相分離が可能であるかを調べた。平行に配向する場合,棒状分子の濃度の増加につれて,排除体積によって等方相からネマチック相へ1次相転移を示し,等方相とネマチック相の2相分離が起こることことが知られている。これに対して,垂直の場合は,排除体積が弱められて,等方相からネマチック相への連続的な2次相転移になることを見つけた。この結果は,棒状分子と液晶分子の混合系がいかに多様な相分離構造を持つかということを示したものであり,この分野のさらなる実験的,理論的展開への基礎になるものである。
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