高Al組成Al_xGa_<1-x>N混晶半導体における局在励起子分子の結合エネルギーを定量的に評価するために、励起子分子発光の励起スペクトルの測定を行った。励起光源には、Xe-Clエキシマレーザ励起の波長可変色素レーザを用い、その第2高調波を利用することにより、広く深紫外波長領域をカバーした。励起子分子発光の励起スペクトルには、励起子共鳴に加えて、励起子分子の2光子共鳴が明瞭に観測された。この励起子分子の2光子共鳴は、2光子吸収過程により基底状態から励起子分子が直接生成される過程を表している。この場合、励起子共鳴と励起子分子の2光子共鳴のエネルギー間隔は励起子分子結合エネルギーの半分の値を与えることになる。その結果、Al組成比x=0.81の混晶薄膜における励起子分子の結合エネルギーをB_M=56meVと導出した。この値はAlNにおける励起子分子結合エネルギー(B_M=19meV)の約3倍であり、高Al組成側においても高Ga組成側と同様に、局在化に伴う励起子分子結合エネルギーの大幅な増大が生じていることを明らかにした。これまでにAl組成比x=0.89およびx=0.61の混晶薄膜試料においても励起子共鳴と励起子分子の2光子共鳴を観測しており、各々の試料における励起子分子結合エネルギーをB_M=48meVおよびB_M=56meVと導出した。これらの実験結果は、Al_xGa_<1-x>N混晶半導体における励起子分子の結合エネルギーには混晶組成比x=0のGaNとx=1のAlNの励起子分子結合エネルギーの値での線形補間が成り立たたないことを明瞭に示しており、その結合エネルギーの混晶組成比依存性には非常に大きなボーイングが存在することを明らかにした。
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