研究概要 |
マイクロ波加熱の分子機構を分子レベルで観測することを目的として、マイクロ波加熱固体NMR装置の開発を行った。この装置により、マイクロ波加熱前後の液晶分子および蛋白質のNMR信号を観測して、非平衡局所分子構造変化を分子レベルでIn-situ観測することが可能になった。開発装置ではNMR装置に分光器外部のマグネトロンマイクロ波発信機(2.45GHz, 1.3kW)から発生させたマイクロ波を導波管を通してNMRプローブに導入した。マグネトロンから発生するマイクロ波はパルス状に発生することが可能であり、NMR分光器のラジオ波パルスと同期することにより、二次元NMRなどの高度なNMR測定が可能になった。液晶分子は分子中に極性基を含むためマイクロ波加熱効率が非常に高い物質である。液晶物質APAPAについてマイクロ波照射NMR装置によりマイクロ波照射による相状態の変化を観測したところ10msの照射時間で液晶相から等方相に相転移を起こすことが観測された。このように短時間でマイクロ波相転移が起こることを利用して液晶相-等方相の状態相関二次元NMRを観測することに成功した。蛋白質は生命現象の担い手となる生体高分子であり、ある蛋白質は生化学反応を制御する酵素としての働きをもっている。この蛋白質は立体構造を保っことが生理活性に重要であることが知られている。この蛋白質にマイクロ波を照射して立体構造が崩れてしまうと蛋白質は活性を失ってしまう。そこでRNAを分解する機能をもつRNAaseについてマイクロ波照射NMR装置でマイクロ波を照射する実験をおこない。天然-変性状態相関二次元NMRスペクトルの観測に成功した。このスペクトルから100msのマイクロ波照射により蛋白質が大きく変性することが明らかになった。
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