非球対称超新星爆発での爆発的元素合成の計算に必要な相対論的流体数値計算コードおよび核反応ネットワークを数値計算する計算コードを構築し、様々な爆発モデルからの元素組成を得た。この初期の結果は国際会議でポスター発表を行った。また、この核反応ネットワーク数値計算コードを用いて行った他の研究成果は査読雑誌に発表した。 さらに研究を進め、観測された近傍媛小銀河の古い星の元素組成との比較から、酸素とマグネシウムの観測組成比は炭素爆燃型ではなく、重力崩壊型超新星で合成された元素の組成でなくては説明できないことを見出した。また、銀河系ハローに属する星の元素組成との比較も行い、蟻小銀河ではより質量の大きい星の爆発によって合成された元素が支配的であるとの結論を得た。爆発的元素合成の計算結果からは亜鉛やマンガンと鉄の組成比は爆発地点からの放出方向によって大きく変わることを示した。同時に、酸素とマグネシウムの組成比は方向によらずほぼ一定であることが分かった。観測された酸素とマグネシウムの組成比は四倍程度のばらつきを持つが、これは爆発した星の質量の違いによると考えられる。炭素爆燃型ではほぼ一定の値を持つと考えられ、観測された0/Mg比の値の下限値に対応することからも重力崩壊型超新星による元素合成の結果であると考えるのが自然である。また、倭小銀河の星の亜鉛、マンガン、鉄の組成の多様性を非球対称超新星爆発での元素合成の結果、放出方向によって組成が違うことによるとすると、その非球対称性に定量的な制限がつけられることが分かった。以上の結果をまとめた論文を現在執筆中である。
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