本研究は近傍で発生した超新星を可視~近赤外線の多波長で精密モニター観測して光度曲線を測定し、理論モデルを構築・比較して、超新星の様々な性質やガンマ線バーストとの関係を明らかにすることが目的である。昨年度は東京大学天文学教育研究センターがチリアタカマ高地に建設する1m望遠鏡(通称miniTAO望遠鏡)の立ち上げ作業を継続した。2010年秋には超新星SN2010ihについて試験的な観測を行い、データを解析しながらminiTAO望遠鏡での観測・解析手順の確立をはかった。また2011年2月にはminiTAO望遠鏡が設置されている高山の山頂と麓の町の施設とのあいだのネットワーク回線を確立した。これらの作業によりminiTAO望遠鏡を使った超新星の長期間の多波長モニター観測の準備が整ったといえる。 理論面では観測史上最も重い星の超新星爆発ではないかと言われている超新星2007biの親星がどのようなものであったのかについて議論を行い、その結果を査読誌で出版した。我々は、この超新星は電子陽電子対生成型超新星であると考えるよりも、重力崩壊型超新星である可能性のほうが高い事を示したが、この結果はまだ不確定な要素の多い、最も重い星の進化や質量放出に関して興味深い示唆を与える。
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