本研究の本年度の目標は、ルチル(TiO2)を素材としたウェッジ付き6素子ウォラストンプリズムを開発して、稼働中の観測装置HOWPolへ組み込み、ガンマ線バースト(GRB)の広視野測光分光同時観測を行うことであった。ガンマ線バーストの初期報告の位置誤差(~3分角)をカバーする広い視野で1露出型偏光観測を行うには、方解石などの複屈折性の大きい素材で30mm□以上の大型のプリズムを作る必要があるが、方解石は熱膨張率の軸差が大きく、熱変化に弱いため、外気に晒される観測装置での利用は向かない。そこで、最近大型のインゴットが手に入るようになった、熱膨張率の軸差が少ないルチル材での製作を試みた。 2009年5月には光学設計ソフトZEMAXを用いたプリズム光学設計を終えて、材料の手配を開始した。6月にはプリズムの構成に充分な硝酸できるだけのインゴットが手に入り、すぐに業者へ加工を依頼した。当初は4カ月程度の加工期間を見込んでいたが、ルチルは癖のある結晶で、業者が必ずしもその扱いに慣れていなかったことや、加工ミスが許されるほど充分な材料が無かったことから、加工は非常に入念に行われた。その結果、当初の予定よりも5カ月ほど遅れた2010年3月にプリズムが完成し、広島大学に納品された。実験室でレーザーを当ててみたところ、4つのビーム分離はほぼ設計通りに行われていることがわかり、所期仕様を満たした1露出型観測のめどが立った。HOWPolそのものでの観測は、既存のプリズムを用いた超新星、GRB等の観測等を行った。 本プリズムを用いた試験観測は2010年度に入ってから行い、その後、GRBの観測を開始させる予定である。
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