公募研究
強磁性半導体は半導体と強磁性体の性質を併せ持ち、半導体のキャリアが強磁性の相互作用を担っている。したがって、キャリア濃度を増減させることで強磁性のスイッチングが可能である。それを明瞭に示した実験はMnドープIII-V族半導体を用いたものであるが、動作温度はキュリー温度以下の低温に限られていた。一方、我々が発見したコバルトドープ二酸化チタンは、最高で600Kを超えるキュリー温度を持つ高温強磁性体である。我々は、これまでコバルトドープ二酸化チタンの酸素欠損量を精密に調製することで電子キャリア濃度の精密制御を行い、キャリア濃度が高い試料では高温強磁性が発現することを明らかにしてきた。今年度は電界効果によるキャリア制御による強磁性の操作に取り組んだ。電界効果の実験手法として電気二重層トランジスタを適用した。このトランジスタは小さな電圧で容易に大きな電界を印加できる方法として現在非常に注目されている。ゲート電圧3-4Vの印加により、伝導率が6倍に増加したが、移動度はほぼ一定に保たれ、主にキャリア濃度が増加した。その結果、ゲート電圧無印加時には常磁性絶縁相であったチャネルが、ゲート電圧印加により強磁性金属相へと転移した。この電界印加による転移は50Kから300Kにいたる広い温度範囲で観測できた。これは、室温強磁性を電界で誘起した初めての結果といえるもので、室温強磁性半導体スピントロニクスへと展開できる。
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