研究概要 |
強磁性金属から実用半導体材料への電気的なスピン偏極電子の注入は、スピントランジスタなどの半導体スピンデバイス実現のための重要な基盤技術である。高スピン偏極電子を注入するためには、金属/半導体接合部をトンネル接合とする必要があることがわかっている。これまで、障壁層材料としてAlO_xやMgOを用いてGaAsへのスピン注入実験が行われきた。しかしながら、これまで高いスピン注入効率と電荷注入効率を兼ね備えた障壁層材料は見出されていない。すなわち、従来の障壁層材料はGaAsとの界面で多量の界面準位が導入されるため、接合界面から大きな寄生電流が発生する。 昨年度、我々は本特定領域における研究においてGaO_xが高品位のトンネル障壁層として利用できる可能性を示した[Appl.Phys.Lett. 93, 172515(2010)]。 そこで本年度は、Fe/GaO_x/(Al)GaAs量子井戸(QW)構造から構成されるスピン偏極発光素子(spin-LED)を用いて、電子の電荷注入効率およびスピン偏極率を見積った。その結果、Fe/GaO_x注入源はオーム性接合に匹敵する電荷注入効率と高いスピン注入効率(スピン偏極率約40%)を兼ね備えることが明らかとなった[Appl.Phys.Express 2,083003 (2009), Appl.Phys.Lett. 96, 012501(2010)]。この結果より、GaO_xがGaAsベースのスピン注入のための重要な障壁層材料であることが示された。
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