公募研究
表面増強ラマン散乱(SERS)と表面増強赤外吸収(SEIRA)はともに光と分子の強結合によって生じるが、増強機構はまだ十分に理解されていない。本年度は、SEIRAの電磁気学的増強機構理論の再検討を行い、下地基板の強増効果を考慮することにより、スペクトルの変形が起こり、実測結果をよく説明することを示した。また、Ag表面に吸着したp-aminothiophenolのSERSとSEIRAの比較を行った。SERSスペクトルは固体試料と全く異なったスペクトルを与えるが、表面と吸着分子間のCTに起因する増強効果(Herzberg-Teller効果)と、光化学反応によるアゾ化の2つの解釈がある。この問題を解決すべく、同一条件下でSEIRAスペクトルを測定したが、固体試料とほぼ同一のスペクトルを与え、アゾ化の可能性は低いことが分かった。また、観測されたSERSスペクトルを量子力学計算で再現することを試みているが、まだ成功していない。その他、SEIRAの応用展開を図り、Pt電極表面でのギ酸からCO_2への電気化学酸化という燃料電池に直結した反応の解析を行った。従来、フォルメートを経る反応と、反応中間体を経ないで直接酸化されるという2つのモデルが提案されている。時間分解スペクトルと酸化電流の詳細な解析によって、この反応はフォルメートを経て起こることを明らかにした。さらに、いくつかの反応系で可視光照射によるプラズモン励起を介した反応促進の可能性を検討したが、現在のところ期待した効果は観測されていない。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (19件) 備考 (1件)
J.Electrochem.Soc. 157
ページ: F10-F15
Angew.Chem.Int.Ed. 49
ページ: 2319-2323
J.Phys.Chem.C 114
ページ: 6011-6018
J.Phys.Chem.C. 113
ページ: 10222-10228
Chem.Lett. 38
ページ: 386-391
J.Am.Chem.Soc. 131
ページ: 6892-6893
ページ: 13218-13219
Bull.Chem.Soc.Jpn. 82
ページ: 1227-1231
J.Phys.Chem.C 113
ページ: 20531-20534
光化学 40
ページ: 78-84
http://www.cat.hokudai.ac.jp/osawa/