研究概要 |
ナノ粒子を用いた表面支援レーザー脱離イオン化質量分析,(SALDI-MS)法における、光-分子強結合場の利用を目標にして研究を行ってきた。特に、可視光領域に強い吸収を持つ金ナノ粒子を用いて検討を行った。いくつかの波長のパルスレーザーで有機物の脱離・イオン化を行ったところ、金が大きな吸収を持つ532nmでの有機物の脱離イオン化に優れた性能を示すことが分かった。一方で、やはり吸収を持つ紫外パルスレーザーでは、その脱離能は他の金属や半導体微粒子に遠くおよばなかった。これは、単に熱エネルギーがパルスレーザーによって局所的に生じ、その熱によって有機物が基板表面から蒸発するという従来のメカニズムのみでは説明できない。一方で、非金属微粒子で、プラズモン吸収ではないが、同様に可視光の一部波長領域に強い吸収帯をもつ半導体ナノ粒子をガス中蒸発法で合成し、基板に固定化したところ、紫外パルスレーザーによって効率よく有機物を表面から脱離・イオン化させることが示された。これは、特に、ソフトイオン化能が高く、フラグメントイオンを強く抑制できる可能瀬があることが分かり、光-分子強結合場による表面支援レーザー脱離イオン化質量分析の切り札となることが分かった。こうした金以外の物質の作る光-分子強結合場を用いた効率のよいSALDI-MS例は初めてであり、そのメカニズムについて考察した。
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